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【石川】65歳の壁 一緒に越えたい 金沢の障害者男性 介護職員と交流

2021年3月21日 05時00分 (3月21日 11時10分更新)
介護施設職員との交流会で自作の紙芝居を上演する塚谷洋さん(中)ら=金沢市富樫のテルウェル介護センタで

介護施設職員との交流会で自作の紙芝居を上演する塚谷洋さん(中)ら=金沢市富樫のテルウェル介護センタで

障害者→高齢者 支援サービス移行


 脳性まひで重度の身体障害がある金沢市の塚谷洋(ひろし)さん(64)は、ヘルパーの介助を受けて一人暮らしを続けている。今、不安がある。来年二月に六十五歳になると、障害者総合支援法に基づき、現在の障害福祉サービスではなく、介護保険サービスが優先され、これまで通りの介助が受けられなくなる可能性がある。この「六十五歳の壁」に思いを寄せてもらおうと、介護施設職員との交流会を始めた。「障害者への理解を深めてほしい」との願いを込めて。 (押川恵理子)
 シンガー・ソングライターあいみょんさんの歌詞が好きだという塚谷さん。「最近、あいみょんにはまってます。つかみょんです」。通所介護事業などを手がける「テルウェル介護センタ」(金沢市富樫)であった交流会で、そう自己紹介すると、笑い声に包まれた。
 現行の仕組みでは障害福祉、介護保険それぞれでサービスの支給量を決める基準が違う。六十五歳を境に介護保険に移行後、岡山県では障害者支援区分が最も重い6だった男性が要介護3となり、サービス支給量は二百四十九時間から約百時間に激減。そうした場合は障害の程度を含め、要介護認定の見直し審査を自治体に求めなければならない。
 塚谷さんはテルウェルで買い物同行などの有料サービスを利用しており、交流会を呼び掛けた。職員は高齢者介護のプロだが、障害のある人と接する機会は少なく、ケア経験もまだ少ない。通所介護事業の事業管理者である真柄幸男さん(65)は「分からないことがあれば聞ける関係を築きたい。住民との交流会やセミナーも開けたら」と話す。

自作の紙芝居で「理解して」

 塚谷さんは自作の紙芝居「ひょっとこ三吉(さんきち)」を上演した。「昔、ある山奥に、おっとう、おっかあ、おにい、おねえ、歩くことができない三吉が一緒に住んでおったんじゃ」
 家族が朝から晩まで働く中、三吉は留守番。心苦しさを抱える三吉だが、村人たちは毎日食べて寝るだけと陰口をたたいた。三吉は泣いた。悩んだ。ある日、家族のために、自分ができることを見つけた。いろりの火を吹き、絶やさないこと。暖かい家には村人たちが集うようになった−。
 紙芝居には塚谷さんの思いが込められている。四歳の時から施設暮らし。十六歳の時、「一人暮らしをしたい」と家族に打ち明けた。その夢がかなったのは、五十二歳の時。起床、食事、入浴、就寝の介助を受け「歯を食いしばりながら自分なりに頑張って生活できている」と塚谷さん。コロナ禍の前は飲み会も楽しんだ。「これからもたくさんの人と出会い、つながっていけたら」と願う。
 日常生活の困り事や恋愛などに関する職員の質問に答えた後、塚谷さんはこう伝えた。「僕から学ぶことは僕の考えでしかない。一人一人違うから、くみ取ってもらえたらありがたい」

選べる仕組み 求められる

 仏教大非常勤講師の孔栄鍾(ごんよんじょん)さん(社会福祉学)の話 障害の特性や福祉ニーズに合わせた支援が受けられなくなれば、「自立生活」を維持できなくなりかねない。厚生労働省は自治体に障害者の状況やニーズに応じたサービスを支給するよう勧告しているが、財源や人材確保の面からも、自治体だけに対策を求めるのは限界がある。個人の生活状況や福祉ニーズに応じて介護保険サービスか障害福祉サービスかを選べる仕組みを導入、明文化することが求められる。


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