運転手感染、不安広がる バス会社「防ぐのは困難」

2020年1月29日 02時00分 (5月27日 04時39分更新)
 中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎をめぐり、日本国内で初めて人から人へとみられる感染が確認された。感染者は奈良県に住む観光バスの日本人運転手で、不特定多数の客を乗せる中部地方の観光バス会社にも戸惑いと不安が広がった。新たな感染者は愛知県でも確認され、医療機関が患者の増加に備えた対応に追われている。
 愛知県尾張地方の観光バス会社の総務担当者は、奈良県のバスの運転手への感染をニュースで知った。直後に乗務員へ一斉メールを送り、手洗い、うがい、マスク着用の徹底を呼び掛けた。
 同社は中国からの旅行者が増える「春節」(旧正月)休みの前から、運行後の座席消毒などを行っていた。中国からのツアー客を最近まで乗せていたといい、「対策としては、これ以上考えつかない」。その中で起きたバス運転手の感染に「早く収束してほしい」と不安そうに話した。
 愛知県内を中心に観光バスを運行する別の会社も、中国からの団体客を受け入れてきた。すでに運転手がマスクを着用するなどの対策をとっているが、担当者は「中国の方からの申し込みがあったら、お客さまとして断るわけにはいかない」と困惑した様子だった。
 一方、中部地方の観光バス会社で運行管理をしている男性は「中国側も渡航を自粛している」と冷静に受け止める。普段は中国からの団体ツアーを担当することもあるが、中国政府が海外への団体旅行を禁止した影響か、直近での予定はないという。
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 東京都に本社がある観光バス会社はこれまで、利用客に失礼との理由で運転手やガイドに原則マスクを着けさせていなかった。だが、国内での感染が広がったため、最近になって全国の六支店に着用するよう通達したばかり。それでも同社担当者は「不特定多数のお客さんが乗るから防ぐのは難しい」と頭を悩ます。
 中国人観光客に人気のある世界遺産・白川郷などがある岐阜県内のバス会社の社員は「ニュースを見てびっくりした。乗客にどこの都市から来たかまでは確認していない」。札幌市のバス会社担当者も「感染ルートがよく分からないので、対応しきれない」と話した。
 感染が確認された奈良県在住の運転手は武漢からの乗客を乗せ、大阪-東京間を往復していた。関西空港からツアー客が多く利用する大阪府のバス会社は「運転手は乗客と密室で長時間にわたって接する。中国からの団体客のキャンセルも相次いでいる中、二重の衝撃だ」と話した。
 大阪市にあるバス会社の四十代男性社員は「旅行会社からもバス会社で感染者が出ていないかと問い合わせがあり、業界に不安が広がっている」とこぼした。

◆バス事業者などに国交省が注意喚起

 国土交通省は二十八日、中国湖北省武漢市での滞在歴がない奈良県在住のバス運転手が新型コロナウイルスに感染したのを受け、全国のバス事業者とタクシー事業者に対し従業員に発熱など感染が疑われる症状があれば速やかに国へ届けるよう注意喚起した。

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