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「輸出検疫」はなぜ必要なのか 遠征馬にとっては負担でも…その他在厩馬の集団を守る大切な措置

2021年3月19日 06時00分

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美浦トレーニングセンターの国際検疫きゅう舎に到着したディープインパクト=2006年8月

美浦トレーニングセンターの国際検疫きゅう舎に到着したディープインパクト=2006年8月

◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」
 27日にUAEのメイダン競馬場で行われるドバイワールドカップデーの諸競走に参戦するJRA所属馬のうち、サウジCデーからの転戦組を除いた7頭が17日、関空発のチャーター便で当地へ飛んだ。各馬の健闘を祈りたい。
 海外遠征の際、越えなければならない障壁のひとつに検疫がある。馬の輸出入の前後に他の馬の集団と隔離。国境を越えて家畜伝染病を運んでしまう“万が一”を防ぐ。
 図らずもこの1年、一定期間の隔離が防疫上の水際対策になることが広く理解されるようになった。帰国した人は2週間の自主隔離。これが「輸入検疫」にあたる隔離だ。
 家畜の移動では「輸出検疫」も厳重だ。現役競走馬の海外遠征では「輸出」で5日間、「輸入」で10日間の検疫期間が設定される。
 外から入ってきた馬を一定期間隔離する「輸入検疫」の考え方は、直観的にも理解しやすい。一方で「輸出検疫」は少々複雑だ。JRA所属馬が輸出検疫に入ると、馬は東西トレセンの検疫厩舎に移って、一般の在厩馬と隔離。馬場入り時刻は通常の開門時刻の前に設定され、入った馬場や、移動経路は丁寧に消毒される。誤解を恐れずに言えば、検疫厩舎に入ったとたん、その馬が何かの疫病に汚染されているかのような入念な扱いを受ける。
 検疫入りする前日まで、輸出馬はその他の在厩馬と一緒に馬場入りしている。輸出検疫は輸出馬が何かの疫病に侵されていることを心配して行うものではない。輸出馬が輸出までにあらゆる感染リスクを負っていないことの高度な証明を通して、その他在厩馬の集団を守ることにある。
 万一、遠征先で馬が感染症に侵された際、輸出検疫がなければ「日本国内で感染していた」という可能性を否定できない。遠征先で感染症を拾うというのがほとんどのケースだろうが、出発地である日本でも、その他在厩馬の大規模検査が必要になる。遠征と無関係な馬と関係者にはたまったものではない。検疫期間は遠征馬にとっては多少の負担になるが、集団の安全のためには尊い措置になっている。

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