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教員免許更新制、実態調査へ 抜本的見直しに動き

2021年3月18日 05時00分 (3月18日 05時00分更新)
教育委員会の開設する教員免許更新講習を受ける現職教員ら=愛知県岡崎市総合学習センターで

教育委員会の開設する教員免許更新講習を受ける現職教員ら=愛知県岡崎市総合学習センターで

 学校現場への負担が大きいと指摘されている教員免許更新制を抜本的に見直すため、文部科学省が制度の問題点を教員に尋ねる初の実態調査に乗り出すことが分かった。萩生田光一文科相は十二日、免許更新制を含めた教員の養成・研修の改革を中教審に諮問。夏までに文科省が調査結果を取りまとめ、議論のたたき台とする。
 免許更新制は「指導力不足の教員がいる」との批判の高まりを背景に政治主導で議論が進み、「教員の資質向上」を目的として二〇〇九年四月に導入された。更新講習は十年ごとに義務付けられ、国内外の教育施策や、いじめや不登校への対応、英語教育などについて主に大学で三十時間以上の講習を受ける。
 受講料や交通費は教員の自己負担で、夏休み期間に講座が開かれることが多い。他の研修と内容が重複するとの指摘もある。
 実態調査の質問項目は、希望通りの講習を受講できているかや、内容が費用や時間に見合っているかなどを想定。定年後に再任用される教員も多いことから、更新制によって再任用を断念する可能性があるかも尋ねる。
 制度見直しの方向性について、文科省内では、教育委員会が実施する十年経験者研修などと統合して受講回数や頻度を軽減する案がある。ただ、情報通信技術(ICT)を取り入れた授業方法を学ぶ必要性が増している他、教員のわいせつ行為が社会問題化していることもあり「単純な講習廃止や緩和ではなく、新たな資質向上策とセットで制度改革を検討せざるを得ない」との見方が多い。

現場負担、根強い批判

 自民党文教族議員らの「指導力不足教員の排除」の掛け声が発端となり、二〇〇九年から始まった教員免許更新制は当初から学校現場の不満が強かった。近年は情報通信技術(ICT)の活用や小学校での英語教育など新たな指導項目が増え、教員の多忙化に拍車が掛かる。働き方改革を迫られ、文部科学省がようやく本格的な見直しに着手する。
 「膨大な仕事を抱えているのに、講習で強制的に時間を取られた」。富山県立高の五十代男性教員は、免許更新制はデメリットばかりだと語気を強める。数年前に大学で更新講習を受けたが「講師の専門分野の話を聞くだけ。現場で直面する課題を踏まえた内容になっていなかった」と説明する。男性教員は「『不適格教員』が消えたわけではない。むしろ仕事熱心な教員ほど苦しんだ」と話し、これまで制度が検証されてこなかったことにも疑問を感じている。
 「業務時間を削減しても、更新講習に費やすなら働き方改革の意欲がそがれる」「講習が役に立っていないという声が相当ある」。昨年十月、文科省の有識者会議が実施したヒアリングでも、複数の教育委員会担当者が異口同音に問題点を指摘した。
 こうした状況の改善に向けて初の本格調査に乗り出す文科省。ある幹部は教育現場から批判があることを認める一方で「指導力不足の教員が減ったことも事実だ」と成果を強調した。

 教員免許更新制 教員免許に10年間の有効期間を設ける制度で、期限前の2年間のうちに30時間以上の講習を受けて修了する必要がある。教員として必要な最新の知識技能を身に付けることを目的とし、教育職員免許法を改正して2009年4月に導入された。それ以前に免許を取得した教員にも適用される。文部科学省は「不適格教員の排除が目的ではない」としている。09年に誕生した民主党政権は制度廃止を打ち出したが、実現しなかった。


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