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<大波小波> 内なる3・11

2021年3月11日 16時00分 (3月11日 16時00分更新)
 3・11以後、文学作品はあまた生まれた。心に残るのは川上弘美『神様2011』、辺見庸『青い花』、吉村萬壱(まんいち)『ボラード病』など原発事故に触発されたディストピア作品だ。
 これらが問うたのは進歩、消費、簡単便利の未来神話には、終わりがあることだ。なぜ人間は科学技術の加速度的進歩を止められぬのか。欲望や知的好奇心という未来への動力は、倫理や道徳の洗礼を受けないのか。進歩幻想のマジックの中でこの十年間、小生らの内なる3・11は思想化されたのか。問いは果てなく続く。
 さて『現代思想』3月号(青土社)の震災特集では、南三陸町出身の歴史社会学者、山内明美がキーパーソンとなり、宮地(みやじ)尚子との対論が秀逸。読者にさらなる思考を呼び込む。被災地の肌感覚で、災後の地元と外側の世界をいかに思想化するか。書斎の研究ではなく、生きた学問を志向している。自らの内なる3・11を抱えているのだ。
 そこから浮かぶのは、作家はもちろん、科学者も人文学研究者も常に自分の内に、鋭利な問いを持たなければならぬということ。今問うべきは、進歩と倫理の相剋(そうこく)のなかで、人間の未来を見据えた上での十年の検証だ。愚...

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