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<ユースク> 消防団員、報酬格差のナゼ 年間4000円と20万円、自治体間最大51倍

2021年2月28日 05時00分 (2月28日 05時01分更新)

コロナ禍の中、規模を縮小して実施された岐阜県白川町の消防出初め式=1月5日

 「地元消防団の報酬が少なく、納得いかない。なぜ自治体によって差が出るの」。夫が消防団員という岐阜県美濃加茂市の女性(33)から「ユースク取材班」に不満が寄せられた。自分の仕事を持ちながら、昼夜を問わず地域の安全を守る重責。なのに処遇の格差はそんなに大きいのか。調べると、消防団によって報酬額がバラバラで、全国で最大50倍余の開きがあるいびつな実態が分かってきた。
 消防団の報酬には一般的に、階級ごとに決められた「年額報酬」や出動に応じた手当があり、その額は各自治体が条例で定めている。今回調べたのは、現場の最前線を担う「団員」の年額報酬だ。
 どこから調べるか考えあぐねていると、消防庁ホームページに全国市区町村の報酬一覧(昨年四月現在)が公開されていた。今回の女性から不満が寄せられた美濃加茂市の場合、三万三千円。これに対し県内で最も高い隣の坂祝町は五万円あり、確かに差がある。一方、県内で一番低いのは白川村の一万五千円だった。
 中部六県では格差がさらに広がる。最高は三重県菰野町と滋賀県愛荘町の七万円、最低は長野県長和町の一万円。名古屋市は二万七千九百円だった。全国では、トップの沖縄県伊是名村が二十万七千円に上るのに対し、最も低い山梨県大月市はわずか四千円だった。
 一覧を見る限り、人口規模や忙しさに比例しているとは思えない。消防庁の担当者にぶつけると、実は同庁が示す団員の年額報酬は「三万六千五百円」という。全国平均はこれを約五千五百円下回る。中部六県の二百三十九消防団のうち、満たしたのは五十六だけ。福井、長野県に至ってはゼロだ。問題はないのか。
 消防庁は三万六千五百円を地方交付税算入額として示し「あくまで参考値のようなもの」との姿勢という。地方交付税は、自前の収入が乏しい自治体が行政サービスを維持できるよう、国が出すお金。財政状況に応じ支払われるが、使い道は自治体に任されている。

 つまり、報酬分として地方交付税に算入された三万六千五百円を、そのまま消防団員一人分の報酬に充てるか、いくらかを他の事業に回すのかは、自治体ごとの考え方に左右される。
 とはいえ、交付税の趣旨からかけ離れた低い報酬では、参加の意欲がそがれる恐れはないだろうか。
 消防庁の担当者は本音を漏らす。「団員の処遇改善を目指す立場から言わせてもらえば、最低でも交付税算入額くらいは出してあげてほしい思いはある」

「なり手」不足深刻 待遇改善課題

 消防団員のこうした待遇の問題を巡り、武田良太総務相は昨年12月、改善を求める書簡を全国の自治体に出した。消防庁の有識者会議は、3月末をめどに改善策をまとめる方針だ。
 同庁によると、これまでの会議では、交付税算入額として「1回7000円」が示されている出動手当についても、多くの自治体が同額を満たしていないことが報告された。支給方法もまちまちだった。全自治体の3分の1は団員個人に直接、支給していたが、他は団経由だったり、団そのものに支給したりしていた。
 消防庁の危機感の背景にあるのが、なり手不足だ。昨年4月1日時点の全国の消防団員は過去最少の81万8478人。入団者は4万3268人で、集計が残る2004年度以降、最も少ない。
少子高齢化の影響に加え、勧誘が本格化する3月に新型コロナウイルス禍が拡大したことが要因という。
 東京大大学院・松尾一郎客員教授(防災行動学)は「消防職員が少ない地方は特に、消防団がないと消防活動は機能しない。少なくとも地方交付税算入額と同等額は支払われるべきだ」と指摘。算入額の一部が消防団の資機材に充てられる例もあるといい「共助の担い手をどう維持するのか真剣に考え直さなければ、なり手は増えない」と語る。
 (渡辺大地)

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