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関心高まる仏語圏漫画「バンド・デシネ」 政治や移民 深いテーマ 

2021年2月27日 05時00分 (2月27日 11時03分更新)
フランス語圏の漫画「バンド・デシネ」

フランス語圏の漫画「バンド・デシネ」

翻訳者・原さん 「内向き日本、世界に目を」


 フランス語圏の漫画「バンド・デシネ(BD)」が日本でも翻訳・出版され、少しずつ広がりを見せている。ジェンダーや闘病、性的少数者(LGBTQ)、政治風刺、移民、音楽など扱うテーマは幅広い。十年以上前からBDを精力的に紹介してきたのが、翻訳者でサウザンコミックス編集主幹の原正人さん(46)=静岡県出身=だ。
 ファシズムの影が忍び寄る一九三六年のギリシャを舞台に、独自に発展した音楽「レベティコ」の奏者たちの一日を描いた『レベティコ』(サウザンブックス社)。昨秋に発売されると、書評に多く取り上げられるなど、話題を呼んだ。二〇〇九年刊の原書にほれ込んだ原さんが、クラウドファンディングで出版をかなえ、翻訳を担当した。「じっくり読むと、移民や難民、低所得者層の疎外など、今の日本でより現実味が増したテーマがちりばめられている」と魅力を語る。
 「絵が描かれた帯」を意味するBDは、主にフランスやベルギー、スイスで出版された漫画を指す。古くはベルギーの漫画家エルジェによる「タンタンの冒険」シリーズ(一九二九年〜)などがある。左開きで横書き、大判で描き下ろし作品が多いのが特徴だ。原さんによると、フランスでは日本や米国からの翻訳を含め、年間五千点ほどの新刊が出ており「日本の漫画よりも知名度や社会的地位が低かったが、年々変わってきている印象」という。
 日本でBDが特に注目され始めたのは、二〇〇九年以降。SF・ファンタジー作品で国際的評価が高い巨匠メビウスの来日を機に邦訳本の刊行が増えていく。一四年を境に落ち着いたが、現在は社会派BDを中心に再び出版が相次ぐ。「芸術性の高い作品は下火になり、よりメッセージ性が強いBDが読まれるようになった」
 例えば、子ども目線で中東での暮らしをとらえた「未来のアラブ人」シリーズ(花伝社)。第一巻は文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞し、第三巻までが刊行済み。他にも自閉スペクトラム症当事者の日常を取り上げた『見えない違い』(同)、北朝鮮に生きる少年の成長を追った『金正日の誕生日』(誠文堂新光社)など、多様な作品が刊行されている。中でも原さんがお薦めする一つが、時代を切り開いた女性の偉人伝「キュロテ」シリーズ(DU BOOKS)。「有名人だけでなく、ひげを生やして過ごした女性とかも出てくる。ポップでかわいくて、かっこよい女性像を提示した作品」
 〇八年から約八十作の翻訳に携わってきた原さん。BDの良さはテーマの多様性に加えて「あまり記号化されておらず、演出も過度ではないこと」と説明する。背景や状況説明が少なく、だからこそ読み解く面白さがあるという。「二〇〇〇年代に入って日本は内向きになった印象がある。自分が生きている社会との関わりを考え、世界のことを知ってもらえたら」と話す。 (世古紘子)

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