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コロナ禍、国際大会中止で苦境 「クラス分け」審査進まず

2021年2月24日 07時35分 (2月24日 07時38分更新)
 クラス分けは、体の状態が多様な選手らが公平に競争するための仕組み。障害の種類や重さが同じ選手をクラス別に分ける。パラへの参加には、資格を持つ「国際クラス分け委員」の審査を受けなければならない。多くの選手が集う国際大会で実施されるのが通例だが、大会とセットで中止が相次ぐ。
 医学的な診断や競技中の動きの確認などに基づいて判断される。手足の切断など状態が変わらない場合は早く確定するが、進行性のものは判断の結果に有効期限が設けられ、数年ごとに審査を受けなければならない。
 卓球知的障害の19歳、浅野俊(たかし=PIA)は、2019年アジア選手権を制して代表に内定したが、クラスが未確定。日本知的障がい者卓球連盟によると、20年にクラス分けの機会が2度ほど予定されたが中止となった。連盟担当者は「外的な理由で資格を剥奪されるのは不本意」と困惑し、5~6月の海外遠征を検討する。浅野は知的障害クラスで出場枠を確保した世界の選手で唯一未確定という。
 日本身体障がい者水泳連盟によると、競泳では久保大樹(ケービーエスクボタ)ら6選手のクラス分けが未完了。4月以降に大会が計画される欧州などへの遠征を視野に入れるが、大会中止の可能性や渡航制限から実現するかは分からない。久保は「待つことしかできない。自分ができることを100パーセントやるのみ」と気丈に話す。
 東京パラの1年延期でクラスの有効期限が切れ、再審査を迫られているケースも。陸上で代表に内定した57歳の伊藤智也(バイエル薬品)がその一人だ。
 数少ない日本人の国際クラス分け委員、指宿立(いぶすき・たつる)日本パラ陸上競技連盟強化委員長は、大会延期が決まった当初から現状のような事態を予想し、国際パラリンピック委員会(IPC)側に対応を求めてきた。だが、IPCはルールの「厳密な運用」を貫き、現時点で特例措置は発表されていない。
 パラには健常の外国選手が障害を偽装して出場したという暗い歴史がある。パラ競技の根幹をなすクラス分けへの厳格な姿勢を、指宿さんは「間違っていない」と理解する。ただ、今は非常事態。リモート形式の導入などを「できる範囲でやってほしい」と訴える。
 日本パラリンピック委員会(JPC)によると、視覚障害選手を対象にしたクラス分けが来月下旬に栃木県で実施される見通しとなった。大会は開催されないが、ブラインドサッカーやゴールボールなどを統括する国際視覚障害者スポーツ連盟が特例で機会を設ける。一方、肢体不自由は競技中の動きも観察して判断するため、クラス分けの単独実施は難しいという。 (神谷円香、兼村優希)

◆陸上・伊藤、期限切れ 再審査必要に リスク冒し海外遠征検討

感染が拡大した昨年4月、トレーニングする伊藤智也=三重県鈴鹿市の自宅で(本人提供)

 陸上で代表に内定している伊藤智也は、2020年末にクラスの有効期限が切れ、再審査を受けないと今夏の東京パラに出られなくなった。中枢神経系の難病の多発性硬化症で体調管理には人一倍気を使うが、感染のリスクを冒して海外遠征を考えざるを得ない。
 アテネ、北京、ロンドンのパラリンピック3大会に出場し、金メダルも獲得したベテラン。一度引退したが、東京大会を目指して復帰。19年世界選手権で男子400メートル(車いすT52)など3種目に出場して表彰台に立ち、内定をつかんだ。
 コロナ禍では、病気に悪影響を与えかねない感染を恐れ、国内外を問わず大会への出場を控えてきた。自粛期間後の夏は地元の三重で練習。「大会を想定して目標タイムを設定し、トレーニングはできていた」と話す。
 昨年11月に病気の大きな再発があり、1カ月間練習ができなかった。ステロイド投与の対症療法で治したが左手の感覚障害が重くなり、車いすをこぐ際、目視しないと手の位置が分からなくなった。
 「今はリスクを避けたい」。感染症が流行しやすい冬場は自宅で筋力トレーニングなどに励む。本番までにクラス分けを実施する国内大会はなく、4月下旬に北京への遠征を予定する。クラス分けが中止にならないか。自身の体調はどうか。不安は尽きない。世界的な渡航制限の中、救済措置を打ち出さないIPCの方針に「過酷すぎる」と率直な思いをぶつける。 (神谷円香)

◆「どう強化」焦り

ゴールボールのジャパンパラ大会で、男子クラブチーム(手前)と対戦する女子日本代表Bチーム=7日、千葉ポートアリーナで

 例年は世界のレベルを体感する大会の風景が一変した。6、7日に千葉県で開かれたゴールボールのジャパンパラ大会。コロナ禍で外国チームの招待を見送った代わりに、日本代表の強化選手で構成した男女各2チームや国内男子のクラブチームが参加した。日本代表にとっては久しぶりの大会だっただけに、選手たちは「緊張感を得られた」と口をそろえた。
 一方、他国との対戦は、女子は昨年3月が最後。男子にいたっては2019年12月までさかのぼる。体格に勝る海外勢の速くて強いボールへの対応は、日本選手相手ではなかなか磨けない。東京パラリンピックで2大会ぶりの金メダルを狙う女子の天摩由貴(マイテック)は「海外選手のボールを受けられないのは少なからず不安要素」と吐露する。市川喬一男女総監督は、東京大会の延期決定前に発表した内定選手の入れ替えを検討しており、「今後メンバーが決まってから、どう強化していくか」と頭を悩ませる。
 パラの選手は感染時の重症化リスクや移動の負担から、五輪の選手と比べると海外遠征のハードルが概して高い。コロナ禍で国際大会が開催されているのは、四大大会がある車いすテニスなどのごく一部の競技だけだ。
 車いすラグビーは感染拡大以降、国際大会が皆無。リオデジャネイロ・パラリンピックで銅メダルを取った池崎大輔は「影響はありあり。自分たちの力を評価できない部分もある」と焦りをにじませる。過去の映像や対戦経験を頼りに頭と体にイメージを植え付けて、大会再開を待つしかない。
 ボッチャは6月まで国際大会が中止。国内でも内定選手が出場する大会はなく、東京が「ぶっつけ本番」になる可能性もある。リオ大会銀メダリストの広瀬隆喜(西尾レントオール)は「試合勘は欲しいところだが、調整できる技術は持っている。それを信じて挑む」。ライバルの手の内が分からないのは「お互いさま」と受け止める。 (中川耕平、兼村優希、高橋淳)

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