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古代エジプトの暮らし<4> 「葬送」来世「永遠の生」を

2021年2月22日 11時08分 (2月22日 11時08分更新)
シャブティについて解説する古代オリエント博物館の田澤恵子主任研究員

シャブティについて解説する古代オリエント博物館の田澤恵子主任研究員

 死んだらどうなるのだろう−。人類普遍の問い掛けに、古代エジプトは独特の死生観をつくり上げた。死は生の終わりではなく、来世で永遠の生を得る。ミイラは肉体を保存することによって死者の魂が戻ることができると考えた。
 こうした死生観が生まれた背景には、エジプトを南北に流れるナイル川と暮らす営みがあったとされる。当時は毎年七月ごろから氾濫が始まり、沿岸部に栄養たっぷりの土を残した。塩害防止や農産物などの恵みをもたらす循環が、生まれ変わるという発想につながったと考えられる。
 「古代エジプト人がどう死と向き合い、現世を生きたのか。私たちに教えてくれることは多い」。そう語るのは、古代オリエント博物館(東京)の田澤恵子主任研究員。彼らが思い描くあの世「イアルの野」は、ナツメヤシがあって花が咲き、ナイル川そばの畑を耕しながら夫婦二人で安寧に過ごす。
 「別の誰かに生まれ変わる輪廻(りんね)転生とは少し異なる。現世のままなのです」と田澤さん。「新型コロナウイルスの感染拡大で死を身近に感じ、自粛期間を通じて多くの日本人が今ある家族や友人の大切さを再認識した。古代エジプトの死生観を通じて、自分を見つめ直すきっかけにしてほしい」と訴える。
 そんな死後の世界にも人間くささが感じられる。今回の展覧会で十一体ある小像シャブティ(展示番号百三十二など)は墓に副葬され、死者の身代わりに来世で農業などの労働に従事するものと考えられた。
 富裕層は一年分の三百六十五体に加え、労働を監督するシャブティも納めた。「食べ物に困りたくない。働かなくていいなら働きたくない。そんな人情が詰まっている」と田澤さん。五千年前の彼らが、ぐっと身近になってくる。
 =終わり
 (この連載は奥田哲平が担当しました)

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