<教訓をつなぐ> (1)感染症対策 避難分散、どう周知

2021年2月22日 05時00分 (2月22日 05時01分更新)
新型コロナ対策でテントが並ぶ避難所。職員が定期的に消毒をしていた=14日、福島県相馬市のスポーツアリーナそうまで

新型コロナ対策でテントが並ぶ避難所。職員が定期的に消毒をしていた=14日、福島県相馬市のスポーツアリーナそうまで

  • 新型コロナ対策でテントが並ぶ避難所。職員が定期的に消毒をしていた=14日、福島県相馬市のスポーツアリーナそうまで
 福島県相馬市の体育館「スポーツアリーナそうま」に、三十七の真新しい「テント」が二メートルおきに並んだ。
 十三日深夜、福島、宮城を襲った地震で、同市は震度6強を観測した。四方を仕切りで囲うテントは、屋根付きと屋根なしがあり、避難所の新型コロナウイルス対策として二カ月前に納入されたばかり。初めての出番となった。
 体育館には一時、九十二人が避難し、三十張りが埋まった。十四日未明に訪れた建設作業員の木村友彦さん(55)は「コロナ対策が取られていなかったら、友人宅に避難しようと思っていた」と話した。
 同市は千張りを用意しており、市社会福祉課課長補佐の佐藤英樹さん(48)は「今回は一カ所で収容できたが、別の避難所でもコロナ対応はできる」と言うが、「東日本大震災のような大災害が起きたら、人手が回らないかもしれない」と懸念する。
 コロナ禍で、中部の自治体にとっても避難所の感染症対策は最大の課題だ。
 昨年七月八日未明、豪雨に見舞われた岐阜県下呂市の指定避難所「下呂市民会館」には、次々と住民が詰めかけた。「受付が混雑しているのにどんどん人が来る。このままでは密集してしまう」。避難所の運営責任者だった下呂振興事務所長の小畑一郎さん(59)は慌てた。
 市民会館の本来の定員は四百人だが、コロナ対策で百十人を上限にしていた。そのため避難者が百人前後になった時点で、移動が可能な人に声を掛け、少なくとも約七十人が別の避難所へ向かった。密集は回避できたが、小畑さんは「避難先が集中した。他の避難場所を住民にスムーズに伝える方法を検討する必要がある」と痛感している。
 東日本大震災では、避難所でインフルエンザの集団感染が起きた。
 震災翌月の二〇一一年四月四日、約五百八十人が避難生活を送っていた岩手県山田町の山田高校でインフルエンザ患者が確認されると、感染は計四十人に広がった。県は医師や看護師らによる「いわて感染制御支援チーム(ICAT)」を発足させ、患者を別室に隔離するなどの対応に当たり、二十日後には収束した。
 ICATの桜井滋・岩手医大教授(感染制御学)は、処置を取らなければ「患者は百人規模になっていたかも」と振り返る。その後、常設となったICATは県内外の災害で避難所に派遣され、一六年の熊本地震では避難所を巡回し、手洗いの場所やトイレの衛生状態などを確認、指導した。
 避難所生活が長引くと衛生状況が悪化し、集団感染のリスクは高まる。清水宣明・愛知県立大教授(感染制御学)は「感染症をいかに防ぐかという専門的な知識や経験を持つ医師や看護師らが不足しており、人材の育成が必要だ。その上で、災害時に集団感染が起きた際、行政は専門家チームを編成し、派遣できるように備えた方がいい」と提案する。
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 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からまもなく十年。災害関連死を含め、二万二千人を超える死者・行方不明者を出した。近い将来、南海トラフ巨大地震が起きるとされ、中部地方では大きな被害が想定される。コロナ禍という新たな災害が加わる中、教訓をどうつないでいるか、現場を取材した。(この連載は全五回です)
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