本文へ移動

古代エジプトの暮らし<3> 「娯楽」西洋音楽の「原型」

2021年2月21日 05時00分 (2月21日 11時08分更新)
オーボエとの指摘があるアシ製のフルート(展示番号44)
Image(C)Rijksmuseum van Oudheden(Leiden, the Netherlands)

オーボエとの指摘があるアシ製のフルート(展示番号44) Image(C)Rijksmuseum van Oudheden(Leiden, the Netherlands)

 「死後」の再生復活を信じて葬送や神事を重視し、庶民がビールを飲む「ビール屋」もあった古代エジプト。いずれの場面にも欠かせないのは音楽だ。古代エジプト展に並ぶフルート(展示番号四十四)が示すように、墳墓から多くの楽器が発掘されている。
 現代名で言えば、ハープやクラリネット、トランペット…。「音楽史の中でも軽んじられ、誤った見方をされることが多いが、古代エジプトの音楽は現代西洋音楽の原型と言っていい」。古代音楽を研究する中部大大学院博士課程の野中亜紀さん(32)は力説する。
 野中さんによれば、ピラミッドが多く建設された四千年以上前の古王国時代の墓には、楽器の演奏場面が多く描かれた。儀式のみならず、草刈りやブドウ摘みの際に歌ったり、貴族の宴会を楽団が盛り上げたりと、生活に密着した娯楽だったことが浮かぶ。
 「楽器だけではなく、音楽の概念も古代エジプトから西洋に引き継がれている」と語る事例は、少年王ツタンカーメンの墓から出土した銀のトランペット。葬送の儀式で使われたと考えられ、聖書で天使が吹く銀のラッパを連想させる。エジプトに残るキリスト教の一派コプト教徒の合唱では、手ぶりで音を指示する古代の手法が残るという。
 野中さんが古代エジプトの音楽を調べ始めたのは中学生の頃。幼少からピアノを学んで愛知県立芸術大で音楽学を修める一方、中部大でエジプト学も学んだ。「音楽学者と考古学者それぞれに互いの分野を知らないので研究の余地が多い」と野中さん。「まさにこれ」と言って指したのが、今回の展覧会のフルートだ。長さや吹き口の形態から、二つのアシを束ねた「双管オーボエ」の可能性がある。日本国内では珍しい研究者。新たな発見を私たちにもたらしてくれそうだ。

関連キーワード

おすすめ情報