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<Meet STEAM> 犯罪データ基に予測アプリ開発 ソフトウエア会社社長・梶田真実さん

2021年2月21日 05時00分 (2月21日 05時00分更新)
梶田真実さん

梶田真実さん

  • 梶田真実さん
  • 過去の犯罪データを基に最適なパトロールの経路を示すアプリ
 過去の犯罪データを基に最適なパトロール経路を示すアプリを開発したソフトウエア会社社長の梶田真実さん(38)。元は統計物理学の研究者で、経験を「世のために使えたら面白い」と起業。自らのスリ被害も生かし「犯罪を減らし暮らしやすい社会」を目指しています。 (聞き手・福沢英里)

本質を見いだす物理学は、世の中のために使える。

 −犯罪予測アプリ開発のきっかけは。
 イタリアで日曜日の午後、目抜き通りを歩いていてスリの被害に遭いました。現地の人は教会へ行くくらいで、日曜日の午後に出歩くことは少ない。「典型的なケース」と言われ、「典型的ってことは予測できる」と思ったのがきっかけです。
 −最初から犯罪予測だったのですか。
 第一弾はガソリン価格の予測アプリです。原油の先物価格のデータを基に価格の上下を予測。「今日は入れどき」「今日は待った方がいい」が分かると便利だなと。アプリを出して消費者の反応を見て、世の中と対話したいと考えました。
 −起業の経緯は。
 起業を視野に入れていたわけではなく、社会を良くするにはどうしたらいいかと思ったのが出発点。それに、個人の立場より法人化した方が仕事もしやすい。まず、各地の警察が公開する軽犯罪の情報を基に、機械学習に物理学で使う手法を組み合わせ、独自の計算方法を考案。性能も上がり、二〇二〇年度からは、東京都足立区と、名古屋市の中川区など四区にまたがる五学区、十六ある区役所の自主防犯パトロール「青パト」に、犯罪予測アプリを実験的に導入してもらっています。一九年度には警察庁に犯罪分析をするソフトウエアも提供しています。
 −どんな学生でしたか。
 高校生のときは宇宙の成り立ちや生命の始まりなど自然現象にまつわる疑問に仮説を立て、数式に当てはめて考えるのが好きでした。女子校でいい友人に恵まれましたが、刺激が足りなかった。小学生から通った国立天文台のプログラムや、大学のサマーセミナーに参加して研究者と話すうち、もっと研究したいと思うようになりました。
 −それで大学へ?
 材料科学の研究者だった父の勧めで、飛び入学という選択肢を知りました。大学では統計物理の理論、詳しく言うと、ガラス状態の研究に没頭しました。ガラスは固体に見えますが、構造をたどると液体に近い。なぜ液体からガラス状態になるのか幾つかの性質は未解明。複雑な現象の中に本質を見いだすのが物理学。その考え方は世の中のために使えると思います。
 −今後の目標は。
 犯罪予測って元々は警察が使っていましたが、日常の生活に使いたいと思う人がいるはず。海外のホテルから美術館やレストランに行く時、最短ルートじゃなくても、スリの多い地域を通らないように地図上に表示されたらいいですよね。また、警備をする人も車もロボットも、最適な場所と時間に配置するシステムをつくってみたいです。

 かじた・まみ 1982年、東京生まれ。高2を終え、千葉大へ飛び入学。東京大大学院博士課程修了後、大阪大、名古屋大の研究員。夫の転勤に伴い滞在したイタリアで、モバイル向けアプリの開発を始める。2017年、犯罪予測アプリを扱うソフトウエア会社「シンギュラー パータベーションズ」を設立。専門は統計物理学。名古屋市在住。

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