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古代エジプトの暮らし<2> 「美」青色は復活の願い

2021年2月20日 05時00分 (2月20日 11時22分更新)
ファイアンス製の「ハピ神の護符」(展示番号173)
Image(C)Rijksmuseum van Oudheden(Leiden, the Netherlands)

ファイアンス製の「ハピ神の護符」(展示番号173) Image(C)Rijksmuseum van Oudheden(Leiden, the Netherlands)

 赤や黄、青などの原色を使い、鮮やかにミイラの棺(ひつぎ)や副葬品を飾った古代エジプト。現代人をも魅了する彩りは、彼らの美的感覚というよりも、それぞれの色に再生復活への願いや信仰が込められていた。古代エジプト展で目を引くのが、ガラスのような光沢と鮮やかな青色が特徴の焼き物「ファイアンス」(展示番号百七十三など)だ。
 ファイアンスとは、ガラスと陶器の中間物質。紀元前四五〇〇年ごろから紀元後に吹きガラス製造が盛んになるまで作られた。表面を覆う青色は釉薬(ゆうやく)を塗り付けたのではなく、銅を混ぜて焼いた自然発色。古代エジプト人は、この青色を求めて技術を磨いた。
 ファイアンス研究の第一人者、東海大文化社会学部の山花京子准教授によると、青や青緑色は古代エジプト語で「ワジュ」と表現し、新鮮さや芽吹きの意味。そのため再生復活の願いが込められたとされる。「日本では、あの世に行くときには白装束。エジプトでは青色のお守りを身に着けた」。死者を来世で出合う危機から守る護符などに用いられ、墓に入れられた。
 古代人が生み出したファイアンスだが、現代人は長年製法が解明できなかった。主原料の石英は水に溶けず、成型できるほどの粘りがない。山花准教授は粘性のある樹脂や蜂蜜などを混ぜて実験したが、どれも失敗だった。工学部の教授に意見を聞き、ピラミッドの石と石の継ぎ目に使われた水酸化カルシウム、しっくいにたどり着いた。
 二〇一八年に世界で初めて立体物の再現に成功した山花准教授。「水が一滴多いだけで成型できなくなるほど繊細で、今では面倒で作れない。材料や焼成温度を改良しながら三千年作り続けたのはすごいとしか言えない」。謎多き焼き物ファイアンスには、古代人の死生観と創意工夫が詰まっていた。

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