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<eスポーツ>後編 将来、発展する可能性は?

2021年2月14日 05時00分 (2月14日 11時40分更新)
 今月のテーマは「eスポーツ」。前編では普及の現状と課題を取り上げ、「ゲームはスポーツ?」という問いと向き合いました。後編ではプロゲーマーと専門家の意見を聞きながら、eスポーツの発展の可能性を考えます。

動画配信が普及の鍵 プロゲーマー・百地祐輔さん

百地祐輔さん

 ゲームがスポーツかどうか正直こだわりはありません。普段はアスリートと変わらず大会に向けて真剣に練習しており、一日十時間以上の時もあります。主な収入源はスポンサー料。大会の賞金はボーナスのようなイメージです。
 一方、動画配信も仕事の一部。プレーの様子を配信することでファンを増やします。やはりファンが多く、露出の多い選手はスポンサーが増えます。半分ユーチューバーのような点は今後、他のスポーツにも波及していくのではないでしょうか。
 依存や視力低下の問題はeスポーツだけでなく、普段スマートフォンを見続ける誰にでも当てはまります。私たちプロは規則正しい生活や体づくりも意識し、対策になる面はありますが、社会全体で向き合うべきテーマです。
 今はまだeスポーツの観戦者はゲームをやる人たち。野球やサッカーのように「見るのは好き」という層が増えれば、もっと発展していくと思う。そのためにも動画配信が鍵になる。選手の引退後のキャリアづくりも大事で、私が立ち上げた会社ではプロチームやゲームイベントの運営に可能性を見いだしています。
 二、三十年後、ゲームで育った世代ばかりになる時代に、どんな存在になっているのか私も楽しみです。

新たな価値もたらす 神戸大大学院准教授・秋元忍さん

秋元忍さん

 「sport」という英語は十九世紀前半までは、競馬や狩猟など英国のエリート層の「気晴らし」が主な意味でした。後半には、盛んになったクリケットやフットボールなど「運動競技」を指すように。明治期の日本にもクリケットや野球が伝わり、昭和に入ると体を動かす競技を総称してカタカナの「スポーツ」が使われ始めました。
 日本でスポーツは人格形成のために体育や部活という形で学校に入り込んだため、真剣に行う身体活動という印象が根強いのです。だからゲームはスポーツではないという多くの意見は納得できます。
 私はeスポーツが新たな価値観をもたらすことで、スポーツ文化全体が好転し得ると考えます。例えば、まだまだスポーツは健常者や若者、男性寄り。eスポーツはその壁を軽々と乗り越えられます。当然スポーツとして市民権を得るには、暴力的なゲームや依存症の問題を解決する必要がありますが、他のスポーツと同様、時間をかけて指針が確立されていくと思います。その上で、一部は純粋な娯楽のゲームとして残っていけばいいのかなと。
 普及の仕方も、学校の体育や部活という従来型に固執せず、例えばネット上のクラブ活動を縦横に広げていくなど、新しくあるべきです。

記者はこう考えた

 ゲームがスポーツ!? 違和感から選んだ今回のテーマ。取材を進めると数年前の同じ感覚を思い出した。「ユーチューバーが人気職業!?」。あの頃、ここまで経済を動かす存在になり、価値観を覆しているとは思いもしなかった。eスポーツの未来も「こうあるべきだ」という物差しで決め付けるのは尚早だ。スポーツの定義自体も変遷してきたのだから。もちろん冷静な視点も必要だが、想像もしない新たな価値にも思いを寄せる。変化が著しい時代だからこそ、心にそんな余白を持っていたい。 (北村希)

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