<リニアで変わる街の記憶>(3)飯田市上郷・北条地区 竹内宏之さん(67)
2021年2月14日 05時00分 (2月14日 05時00分更新)
江戸時代の後半ぐらいから続く家で、自分で七代目。自宅と農地の計約五千六百平方メートルが、駅周辺整備の区域と重なっています。
今の家は、ついのすみかにと、退職後の二〇一三年四月から建て替え工事を始めました。その年の九月に、リニア中央新幹線計画の発表があった。もうショックですよね。その数年前に恒川官衙(ごんがかんが)遺跡をルートから外してほしいと飯田市教委が要望していた。自分たちは犠牲になって、遺跡は残すんだなと、心のわだかまりは残っている。
頼まれて移転するのだから、最低でも今の生活を維持したい。十五年ほど前に亡くなった父には、一坪でも無駄にせんようにと言われた。長男は定年後、戻って農業をしたいと言っている。今は孫が来るのに合わせて準備して、イモ掘りをさせてやったり。そういうのを見ることだけが楽しみ。できれば住みやすい北条に残り、農地も残したいけれど、北条では農地を確保するのが無理。
ここ何年かは地域の行事が衰退しているが、三年ぐらい前は上郷の運動会で北条が総合優勝し、盛り上がった。北条は三班まであるうち、私の住む一班はほとんど移転する。行事を継続していくことは難しくなると思う。
リニ...
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