<あいちの民話を訪ねて>(25)毛替地蔵(名古屋市天白区)
2021年2月14日 05時00分 (3月1日 10時35分更新)
名古屋市天白区の鳴海街道沿い。一四四二年に建てられた「島田地蔵寺」には、馬の毛色を変えたという地蔵が安置されている。
一丈六尺(約四メートル八五)の大きさで、右手に錫杖(しゃくじょう)、左手に宝珠を持って座禅している。神野哲州(じんのてつしゅう)住職(72)によると、地獄に落ちた人をも救う慈悲深い地蔵だという。
寺には、同市瑞穂区の仁所(にしょ)町で古老から伝わった別の毛替え話も残る。「戦国時代には戦いに備えて、黒い馬が農民から集められた。だが、貴重な馬を渡したくない農民たちが米粉を振って白くした馬を差し出した。島田のお地蔵様が色を変えてしまったと言うと、役人は黙って帰っていった」。神野住職は「皆の罪をかぶったことが、全ての人を救う仏といわれるゆえんかも」と話す。
神野住職は、地蔵の力によって「世界中の人の髪色が変わり、パーマまでかかるようになった」と冗談交じりに笑う。御利益は「毛髪が美しくなる」こと。昭和初期には、くせ毛に悩む芸者が一晩中祈祷(きとう)を受けに来たという。仏前には髪の毛がささげられ、お参りする女性たちの絵図も。古くから悩みを抱える人が多く訪れていたことが分かる。
現...
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