<EYES> ZIP-FMナビゲーター 荒戸完さん ラジオという芸術

2020年4月16日 02時00分 (5月27日 03時52分更新)
 先日、私が初めて担当したラジオ番組「Groover’s Dive」が最終回を迎えた。学生をターゲットに5年間、回数にすると1039回、一度も休まず放送した。「受験勉強の時はお世話になりました。今、納車したてのマイカーの中で久しぶりに聴いてます」。最終回には懐かしい名前から、時の流れを感じさせるメッセージがたくさん届いた。
 私は、学校という閉鎖的な場所で半ば強制される勉強が大の苦手だった。そんな私に、家で机に向かう習慣をもたらしてくれたのが、高校生のころ何げなく聴き始めた地元・福岡のラジオ番組だった。かっこいいDJが紹介していくメッセージは、自分と同世代から届いたもの。放課後に友達とたわいもない話をしている時のような、満たされた時間だった。
 東京で過ごした大学生活はとにかく毎日が刺激的で、ラジオよりもずっと楽しかった。友達をつくって、毎晩クタクタになるまで遊びの限りを尽くした。再び私の生活にラジオの習慣が戻ったのは、車に乗り始めた時だ。一人で運転している時、かつて勉強机に向かったときと同じようにすごく孤独を感じ、ふと手が伸びたのがラジオだった。
 ラジオを聴く時、人はDJが話す言葉や音楽をダイレクトに心で感じながら、想像を膨らませる。そして、同じ時間に同じ番組に参加している人間の数を思うと、とてつもないエネルギーと絆を感じることができ、孤独を埋めてくれる。
 ラジオは、リスナーの想像力によって完成する音と時間の芸術だ。そしてこの5年間、私に課せられた仕事は種まきだった。リスナーは小学生から大学生までいた。ここで植えたたくさんの種が芽を出し、ラジオという文化を紡いでいく1本1本の大きな木になることを願っている。

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