<EYES> 教育哲学者 苫野一徳さん 「10年後」への提言

2020年4月2日 02時00分 (5月27日 03時52分更新)
 小学校では、この4月から新学習指導要領が全面実施される。最大の目玉は「主体的・対話的で深い学び」や「社会に開かれた教育課程」などだ。授業時数や学習内容が増えるため、さらに現場のゆとりがなくなる危惧はあるが、全体の方向性は、時代に応じた改定だと言える。
 今回は少し気が早いが、2030年ごろに実施されるであろう次の学習指導要領改定について提言したい。
 文部科学省は近年、「公正に個別最適化された学び」の実現をうたっている。人によって学びのペースや興味関心、使いやすい教材などは異なる。にもかかわらず、学校は「みんなで同じことを、同じペースで、同じようなやり方で」勉強する場所だった。いわゆる落ちこぼれや吹きこぼれ、過度の同調圧力の問題などは、このシステムにかなり起因している。その意味で「みんな一緒」からの脱却はきわめて重要な方針だ。
 ただし、単なる個別化は孤立化を生む。学びの個別化は、仲間の力を借りたり、人に力を貸したりできる「ゆるやかな協同性」に支えられる必要があるということを強調しておきたい。
 学びの個別化を進めるのであれば、まず求められるのは、学年ごとのカリキュラムの弾力化だ。進度は人それぞれ。4年生で5年生の学習に進みたい子もいれば、3年生の学習に戻りたい子どももいる。小中一貫の義務教育学校では、すでに認められているが、その成果を検証しつつ、今後の改定につなげていきたい。
 もう一つ、標準授業時数の弾力化も必要だろう。同じ学習内容でも、習得に必要な時間は異なる。現行のように、全員一律に設定するのはナンセンスだ。
 新学習指導要領の「元年」。今後出てくる課題を明確にしつつ、さらに次の改定の議論も進めていきたい。

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