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ジェネリック普及に逆風 不信感広がり 懸念の声 

2021年2月9日 05時00分 (2月9日 10時30分更新)
 ジェネリック医薬品(後発薬)を製造販売する「小林化工」(福井県あわら市)で、爪水虫などの治療薬「イトラコナゾール錠」に睡眠導入剤の成分が混入した薬害事件。同社によると8日現在、服用した人のうち239人から健康被害が報告され、死者も出るなど製薬業界を揺るがす不祥事になった。企業のモラルに対する批判の一方で、ジェネリックの普及にブレーキがかかることを恐れる声も高まる。 (編集委員・安藤明夫、植木創太)

爪水虫薬で健康被害 初の供給調整


立ち入り調査のため小林化工の本社に入る厚労省や福井県の職員ら=2020年12月21日、福井県あわら市で


 県などによると、厚生労働省が承認した製造手順に反する作業をしたことが、混入の理由。加えて、社内規定では二人一組で行うとする作業を経験の浅い従業員が一人で担当し、その後の成分チェックも怠った。
 同社は一月中旬から、全製品の出荷を停止した。県は同社に対し、百十六日間の業務停止命令を出す方針だ。製薬会社に対する業務停止命令では、全国で過去最長となる。
 立ち入り調査をした厚労省の田中徹課長は昨年末、製薬業界の三十一団体でつくる日本製薬団体連合会の会合で「経営陣の『現場任せ』の姿勢が根底にあるのではないか」という見方を表明。病院や薬局で在庫不足への不安が高まっていることを受け、供給調整を要請した。

 連合会は二〇二〇年二月策定の「医薬品供給調整スキーム」に基づき、他社の製品リストの作成、在庫量の把握、出荷調整のほか、増産も始めた。スキームは、市場シェア30%以上の医薬品が一カ月以上欠品する可能性がある場合に実施。今回の対象は、同社が高いシェアを持つ抗てんかん剤「バルプロ酸ナトリウム」など十三成分の医薬品だ。医薬品の安定確保に関する国の会議のメンバーで神奈川県立保健福祉大の坂巻弘之教授によると、スキーム発動は初めて。ただ「企業間の調整に課題があり、品薄が今後も懸念される」と警戒する。
 事件が提起したのは、医薬品の安定供給を巡る問題だけではない。ジェネリックへの不信感の広がりだ。
 ジェネリックは、新薬メーカーが開発した先発医薬品(新薬)の特許が切れた後、他のメーカーが同じ成分で作る薬。新薬と同様の治療効果が期待できる。新薬のように莫大(ばくだい)な研究開発費が不要なため、薬価は新薬の四〜七割程度だ。
 患者の自己負担軽減だけでなく、増え続ける国民医療費の抑制につながるとして、国は二〇年九月までに数量シェアを80%以上にすることを目指してきた。目標には届かなかったが、一五年に56・2%だったシェアは二〇年九月時点で78・3%まで上昇。保険診療で処方が認められている約一万五千の医薬品の半数ほどをジェネリックが占める。

 事件は、こうした流れに冷や水を浴びせかねない。日本保険薬局協会がイトラコナゾール錠の在庫があった全国百六十三薬局の対応を調べたところ、患者、医師ともに「薬を先発品に戻したい」という声が目についたという。
 坂巻教授は「先発系メーカーでも混入などは起こりうる。ジェネリックだから悪いと誤解しないで」と強調する。がん治療の分野では副作用が少なく、効果が大きい分子標的薬や抗がん剤が続々と開発され多くの患者が恩恵を受けているが、そのジェネリックも相次いで登場している。

新薬促す役割も

 新薬の特許が切れた後、ジェネリックが主役となる「世代交代」が市場で当たり前になれば、先発薬メーカーのイノベーション(技術革新)に対する意欲は高まる。坂巻教授は「医療費を抑えて国民皆保険制度を維持し、さらにイノベーションを支えるためにもジェネリック推進は必要」と訴える。

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