本文へ移動

リニア着工 JR「椹島下流 流量維持」 難波副知事は反論

2021年2月8日 05時00分 (2月8日 10時57分更新)
 リニア中央新幹線の南アルプストンネル(静岡市葵区)工事を巡り、国土交通省の第八回有識者会議が七日、同省で開かれた。JR東海は、山梨県側に流出するトンネル湧水の総量を、同社と静岡市の解析モデルを使って試算し、それぞれ三百万トン、五百万トンと初めて提示。座長の福岡捷二中央大研究開発機構教授は「流出しても、椹島(さわらじま)より下流では(大井川の)河川流量は維持される」とのコメントをとりまとめた。
 一方、静岡県の難波喬司副知事は「維持されるということはない。納得できない」と反論している。
 山梨県境でのトンネル工事では、山梨側から上り勾配で掘る。このため静岡側とトンネルがつながりポンプアップが可能になるまで、湧水は山梨側に流出。静岡県は県内で発生した湧水をすべて元の場所に戻すよう求めており、流出量も論点の一つになっている。
 JRはこれまで県の専門部会で流出量を約二百万トンと説明してきた。今回、計算方法を変更して二つのモデルで試算。流出する期間は十カ月とした。
 湧水が山梨側に流出する期間の大井川の流量予測も両モデルで算出。導水路トンネルの排水口のある椹島下流では、いずれも着工前を上回った。JRは「地下水がトンネル湧水となり、導水路トンネルから排出されるため」と説明し、椹島下流の「河川流量は維持される」としている。
 長野県側への流出総量については、JRモデルで二十万トン、静岡市モデルで二万トンとの試算を、会議後に記者団に明らかにした。
 会議では、完成後二十年程度の大井川の流量も提示。着工前と比べ、上流の田代ダム以北ではJRモデルで毎秒二・一トン、静岡市で毎秒一トン減少するが、椹島以南ではJRが〇・五トン、静岡市は〇・三トン、それぞれ増える推計値を示した。
 ただ、いずれも渇水期の影響は示されていない。委員からは「非現実的なシミュレーション。『減らない』と言うが、実際は分からない」などの指摘も出た。
 国交省の江口秀二大臣官房技術審議官は会議後、記者団に、生態系への影響についても有識者会議に新たな委員を加えて議論する方針を示した。 (大杉はるか)

◆委員から疑問の声 断層を過小評価

 リニア中央新幹線の南アルプストンネル(静岡市葵区)工事に関する国土交通省の第八回有識者会議。座長コメントでは「トンネル湧水が県外流出しても、椹島(さわらじま)より下流側では河川流量は維持」と取りまとめられたが、委員から疑問も相次いだ。
 県専門部会の委員でもある森下祐一静岡大客員教授(地球環境科学)は、JRの解析モデルで使っている透水係数について「県境付近の断層は過小評価している。境付近の断層帯はかなり幅広く、透水係数は高い(湧水量が増える)可能性がある」と指摘した。
 徳永朋祥東大教授(地下水学)は、工事期間が延びて山梨から静岡への先進坑の接続が遅れ、湧水の流出が続く可能性を挙げ、「それを避けるための工事は、それに基づき議論することが大事だ」と述べた。
 沖大幹東大教授(水文学)は「河川流量は季節変化が大きい。流量が少なくなる冬季に何が起きるのか示した方が安心感が上がる」と指摘。福岡捷二座長が「山梨側に流出した場合も含め、椹島下流では(流量が)下回らないことが示された」と議論をまとめようとすると、「若干誤解を生む」と苦言を呈した。
 大東憲二大同大教授(環境地盤工学)は「上流は大きく河川流量が減るという想定だ。今回の数字が、生態系への影響に使われるということを前提に考えほしい」と要望。西村和夫東京都立大理事(トンネル工学)は「施工段階になれば環境モニタリングする。数値解析としては一つの参考値だ」との見方を示した。
 難波喬司副知事は会議後、記者団に、JRの説明や座長コメントで「椹島より下流側の河川流量は維持される」とされた点は「正確性を欠く。納得できない」と不満を示した。導水路トンネルの排出口である椹島地点の河川流量は増えても、下流に行くほど地下水が減る可能性を挙げ、「JRはゼロリスクのような説明をしているが、信頼できない」と述べた。 (大杉はるか)

関連キーワード

PR情報