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「福島が沈黙した日 原発事故と甲状腺被ばく」東京新聞 榊原記者が出版

2021年2月6日 05時00分 (2月6日 11時03分更新)
 東日本大震災による東京電力福島第一原発事故から間もなく十年。東京新聞(中日新聞東京本社)特別報道部の榊原崇仁記者が、事故後の甲状腺被ばく測定の実態に迫った「福島が沈黙した日 原発事故と甲状腺被ばく」(集英社新書)を出版した=写真
 チェルノブイリ事故で問題になった甲状腺被ばく。情報開示請求で得た二万枚超の文書とおよそ五十人の関係者取材を手掛かりに、政府が福島の事故発災二週間後に行った甲状腺被ばく測定に焦点を絞り、千八十人だけで調査を終えた不自然さに疑問を向けた。二〇一九年に連載した記事を基に、被ばくの実態把握がないがしろにされ、被害の痕跡が闇に葬られた内幕をつづる。
 関係者への取材で、数万人測定の構想や福島最大の都市・いわきへの避難区域拡大案もあったことを明らかにし、測定が早々と打ち切られた裏に独特の解釈があったことや、本来は行われるべきだった実態把握を省くために計算式の改変による被害の矮小(わいしょう)化を図ろうとした経緯も暴いた。
 「バリバリ仕事して、結婚もしたいと思っていました。でも、がんになって歯車が狂ってしまったと感じています」。原発事故時に中学生で福島市内で被ばくし、五年後に甲状腺がんを発症した女性を取材した。自身のがんと原発事故との関係を「あると思っています」と語る言葉が痛切に響く。
 榊原記者は二〇〇二年に中日新聞入社。震災発生時は北陸本社報道部勤務で、原発事故を想定した自治体の地域防災計画などを取材した。その後、東京・特報部で福島県の県民健康調査、政府の避難指示解除や帰還政策を継続的に報じて、一六年に第四回日隅一雄・情報流通促進賞奨励賞を受賞している。二百八十八ページ、税込み九百九十円。(松岡等)

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