<個人の自由>前編 ゲーム、喫煙…規制どこまで

2020年4月5日 02時00分 (5月27日 03時52分更新)

改正健康増進法の全面施行に先立ち、3月から地下街の店舗が全店禁煙となったことを伝える案内板=名古屋市で

 子どものインターネットやゲーム依存症対策に向けた条例が香川県で一日に施行されました。「一日六十分まで」を目安に各家庭でオンラインゲーム利用のルールを作り、子どもに守らせるよう求める内容が「家庭への介入だ」と議論を呼びました。今月の「Dig!」は、個人の自由にどこまで国や自治体が規制などの形で介入できるのかを考えます。 (河原広明)

条例で目安示す

 「各家庭の事情を踏まえて各家庭が決めること。行政が私的なことに介入すべきではない」「過剰な規範の押しつけだ」
 香川県議会での条例成立前に実施されたパブリックコメント(パブコメ、意見公募)。ゲーム利用時間の基準を「平日六十分」、中学生以下のスマートフォン利用は「午後九時まで」などと示した第一八条に対し、こんな反対意見が並んだ。
 条例制定を主導した県議会側は当初の案にあった「制限」「基準」の文言を「目安」などに修正。規制の意味合いを弱め、家庭でのルール作りを促す目的として理解を求めた。利用時間の目安を守らなくても罰則はない。
 世界保健機関(WHO)は昨年五月、「ゲーム障害」を新たな依存症に認定。国立病院機構久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)は同十一月、十~二十代の若者に関し、ゲームなどの利用時間が長いほど学業や仕事への悪影響が起きやすい傾向にあると発表した。
 ゲームなどにのめり込む子どもへの対応に悩む保護者も少なくない。パブコメには「家庭内規制に苦労している。行政が規制してくれれば、堂々と『決まりがある』と言える」との賛成意見も寄せられた。

「迷惑」か「害」か

 自由への介入が生じる場面は、ほかにもある。公共の場での喫煙を厳しく規制する改正健康増進法が今月、全面施行された。すでに敷地内禁煙となっていた病院や学校などに続き、飲食店やオフィスなども原則として屋内禁煙となった。
 「迷惑と言うなら、強い香水のにおいだって不快だ」。社会の分煙化の動きに、かつてはこんな反論も。だが、喫煙者の周りの人がその煙を吸い込む受動喫煙は「深刻な健康影響がある」(厚生労働省)とされる。「迷惑」にとどまらない「害」が認知されるにつれ、分煙の流れは強まった。
 一方、ゲーム利用時間の目安を示した香川県の条例とは異なり、自宅での喫煙に「一日何本まで」という決まりはない。商品包装に本人や周囲の人の健康への影響を警告する表示があるだけだ。

◆「誰のため」慎重な検討が必要

 個人の自由への介入を考える物差しになるのが「他者危害原則」。喫煙規制は、受動喫煙の「害」が公共の場所で喫煙を禁止する根拠となり得ることになる。
 現実にはシートベルトの着用義務など原則に当てはまらない介入も多い。着用しなくても他の人に害が及ぶわけではなく、「本人のため」という理屈だ。香川県の条例も同じで、目的は「ネット・ゲーム依存症対策」。そうした形での介入は「おせっかい」と紙一重で、どこまで認めるか慎重な検討が必要だ。
 世界に目を向けると、アメリカなどでは肥満対策として砂糖を含む炭酸飲料などに課税する「ソーダ税」を導入する地方政府も。
 個人の自由に介入するさまざまなルールを「他者危害原則」「本人のため」などの物差しで捉え直してみてはどうだろう。身近な学校の校則を考えてみてもいいかもしれない。
 <他者危害原則> 「個人の自由を規制できるのは、その行為が他人に危害を及ぼす場合に限る」という自由主義の原則。19世紀のイギリスの哲学者ジョン・スチュアート・ミル(1806~73年)が著作「自由論」の中で示した。対象は判断能力のある成人で、未成年については教育と保護の観点から、本人の意思にかかわらず自由が制限されうると論じた。

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