「都市封鎖」でどうなる? ロンドンからの報告

2020年3月31日 12時00分 (5月27日 04時33分更新)
 新型コロナウイルスの爆発的な患者急増が首都圏で懸念され、東京のロックダウン(都市封鎖)も現実味を帯び始めた日本。実施されるとどうなるのか。元テレビ局記者で、現在はロンドンに住む本多三千代さん(53)=愛知県犬山市出身=に、3月23日から3週間の予定で全土で外出制限が始まった英国での様子を報告してもらった。
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 英国より先行してロックダウンの措置が始まったフランスでは、在パリの友人によると、許可されている外出(買物、ランニングなど)をするときは、理由を書いた紙を持ち歩くことになっているそうです。
 英国では「証明書」のようなものまでは要求されていません。少しは国民の「自主性」を重じているのかもしれません。
 ■収まったパニック買い
 英国では(外出制限開始から)わずか2日で、いわゆる「パニック買い」状況は収まっているのではないかと感じました。
 ロンドン繁華街のスーパーで、前週は棚がずっと空っぽだった卵が売り切れでなくなり、数量は限られているものの、トイレットペーパーもありました。
 政府が「やってもいいこと」を含めた具体的な「行動指針」を示したことがとても大きかった、と感じます。それまではともすると、イタリアやスペインなどの惨状を日々ニュースで見て「ロックダウン」のイメージ先行で行動してしまっていたのかもしれません。

「ロックダウン」実施を報じる英国の新聞。「自宅軟禁」「自由の終わり」の見出しもある

 「最低限の外出は可能」「もし買い物に出られなくなってもボランティアが玄関まで来てくれるかも」という安心感。また、きちんと守っていないと社会がより深刻になり、自分の暮らしももっと制限される、という市民の側の認識。ある意味の「連帯感」が生まれたのでしょうか。
 いたずらに市民の行動や不安をかきたてることを防ぐためには、海外の例などをひいて、政府・行政がある程度、事前にまとまった具体的な状況を説明し、市民が心の準備ができるようシミュレーションしておくのも必要ではないかと思いました。
 ■年配者への配慮
 23日夜の首相会見から一夜明け、いつも行くスーパーを回りました。大手スーパーのほとんどが、開店後1時間はお年寄りなど「社会的弱者」に限って入店という措置を取るようになっていました。
 いくつかのスーパーで、食材を奪い合う形でお年寄りがけがをした、という出来事があり、「お年寄りへの感染機会を極力減らす」という観点からも健全だと思います。
 スーパーへの行列では、みな首相のアドバイスに従っているのか、2メートル程度の距離を置いて並んでいました。行列の理由は、入店人数を40人までに限定して、店内でのすれ違う距離を保つことにあります。入店の際は、店員がドアを開け閉めして、一人ひとりに「距離を保つことにご配慮ください」と伝えていました。
 英国の国民保健サービスであるNHS主導で、ボランティア呼び掛けも始まりました。家から出られない高齢者など向けに、本人に代わって食材や薬の買い物に出かけたり、電話で話し相手になったりする活動をします。国民から25万人のボランティアを募り、既に登録者は40万人超えたそうです。
 ■高まる愛国心
 ただ、こういう状況では愛国心があおられがち。ボランティア募集のサイトでは、組織する団体が第二次世界大戦時に女性たちの自発的な支援行動から創設された、とありました。そして今は「COVID(コビッド)-19との戦いだ」と。
 わたし自身、地域の一員として貢献したいと思い登録しました。しかし、ともすれば、大きな不安を抱える国民を政府が思う方向へ誘導していくことは平時に比べて容易であるようにも感じています。
 先日、夜8時に、外からフライパンや鍋をたたく音が聞こえてきました。
 「(感染の最前線で奮闘する)NHSスタッフに感謝の気持ちを伝えよう」という呼び掛けによる一斉行動だったようです。

フライパンや鍋を鳴らして医療従事者を励ます住民ら

 わが家は大病院がすぐ近くにあります。通勤、帰宅途中の医療スタッフがその音を聞いたら、疲れがいやされ、励まされるのかもしれません。
 その一方で、こうした「美談」を通じて、「全体主義」があおられることにもなりかねない、そんな危うさも感じます。
 ■ストレス
 極端な行動制限による自由の束縛は、ごく限られた短時間ならまだしも、長期になるとストレスがたまり、そのいら立ちの矛先が「全体主義」から外れた個人へと向かってしまうのでは。政府指導で「一日一回」とされているランニングをした帰りに、夫婦でそんな懸念を話していました。
 ケンブリッジに住むラン仲間の女性は、男性ランナーとすれ違う際に「2メートル以上距離をあけろ!」と2回罵声を浴びたそうです。距離をとるのはお互い様なのに。彼女は「ストレスをためる人もどんどん多くなってくるだろうな」と感じているそうです。
 ちなみにマスクに関しては、今やロンドンでもマスクをしていても決して奇異な目では見られません。
 ■詐欺メッセージ
 先日、スマートフォンにテキストメッセージで「政府が世帯に552ポンド(約7万3500円)の支給を決めた。詳細はこちら」というリンクが送られてきました。とっさにリンクを押して開いてしまいました。
 テキスト詐欺。そのページとテキストは端末から削除し、現時点ではスマホも正常に動いていますが、モバイルバンキングデータは大丈夫だろうかと、いまだに心配です。
 ともすると、自宅にいる時間が長くなり、携帯に届く情報やネットなどに情報を頼りがち。こういう状況だからこそ、何ごとも冷静に、ひと呼吸置く姿勢を堅持しなければならないですね。
 ■帰国できず
 一番困っていることは、静岡県で入院が続いている義父の見舞いに帰れなくなってしまったこと。4月中旬に夫婦で一時帰国を予定していたのですが、あきらめました。もし自分たちが気づかないうちに感染していて、義父だけでなく、高齢者が多い入院中の患者に迷惑をかけることになっては、後悔してもしきれない。
 一方で、義父の見舞いや、日常の買物に移動の支援が必要な義母の助けだけでもせめてできれば…と、渡航中止を決めかねていたのですが、日本が英国からの入国者を「入国後2週間の自己隔離」対象に加えたことで断念しました。
 英国に戻っても2週間の自己隔離で、つごう4週間の空白ができてしまいます。仕事の面だけでなく、いずれの国でも長期のホテル住まいとなれば経済的にも負担が大きいです。
 空港から公共交通機関が使えないとなると、移動も厳しい。いずれににしても、足元の英国の状況が収まらない限り、日本政府の対応も変わらないでしょうか、一日も早い終息を願っています。

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