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【石川】加賀発漆芸 狙うは世界 更谷さん 山中温泉で後進育成 

2021年2月1日 05時00分 (2月1日 10時11分更新)
研修生を指導する更谷富造さん(中)=石川県加賀市山中温泉荒谷町で

研修生を指導する更谷富造さん(中)=石川県加賀市山中温泉荒谷町で

  • 研修生を指導する更谷富造さん(中)=石川県加賀市山中温泉荒谷町で
  • 重要伝統的建造物群保存地区にある古民家を改装した工房「アメージングギャラリー」=石川県加賀市山中温泉荒谷町で

海外経験「高い品質ビジネス成立」


 漆芸家で漆芸品修復の第一人者でもある更谷(さらたに)富造さん(72)が、石川県加賀市山中温泉荒谷町で工房「アメージングギャラリー」を開き、後進の育成に取り組んでいる。「海外のコレクターは日本にしかない、レベルの高い漆芸品を求めている。ビジネスが成り立つことを若い作家に伝え、生きる道を示したい」。海外経験で培った知識や技術を惜しみなく伝えている。 (小室亜希子)
 工房は約十年前から所有する古民家を改装し、昨夏オープンした。作業スペースはガラス張り。訪れた人は修復や制作の様子を見学できる。工房の中心にいろりがあり、窓の外は雪景色。「こんな美しい景色は他にない。人を育てる空間は、圧倒的に田舎の方がいい」と更谷さんは話す。
 故郷の京都で漆芸を学び、二十六歳の時、オーストリア・ウィーンに移住。国立応用美術館で漆芸品の修復を担当した。その後フリーで欧米の美術館や貴族、オークションハウスなどの依頼で、重要文化財級を含めて六千五百点以上の修復を手掛けた。英ロンドンや米シカゴなど海外生活は二十年に及び、幅広い人脈を築いてきた。
 更谷さんは漆芸品を「日本が捨てた宝物」と指摘する。明治維新以降、国内の名品は大量に海外に流出。それらが今も欧米の美術愛好家に珍重されているのを見てきた。現代の作品であっても、魅力的で愛好家に好まれれば、高値で取引される。中でも「日本独特の技術である蒔絵(まきえ)の人気は非常に高い」という。
 一方、日本国内では作品そのものより、公募展の受賞歴など作家の肩書が重視される。「競争原理が働かず、独創性が生まれない。狭い世界では若い人が育たず、漆文化が消滅する」。危機感から、残りの人生を後進の育成にかけようと決意。修復の講師で招かれた縁で加賀市を、ついのすみかに決めた。
 工房では初心者から経験者まで五人ほどが個人指導を受ける。その一人、山中漆器の蒔絵師岡崎宏信さん(36)はコロナ禍で受注が激減し、転職すべきか悩んでいた時、工房を見学した。「これまでと同じことをしていても状況は変わらない。蒔絵に求める海外の感覚を教わり、前に進むきっかけにしたい」と話す。
 海外から修復の依頼で届く名品に触れるのも大きな学びだ。更谷さんは「海外の人は日本のにおいのする一点ものを求めている。コロナ禍の今こそ、原点回帰する時」と話す。

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