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鯨の耳骨構造 世界初の解明  恐竜博物館研究員ら 

2021年1月29日 05時00分 (1月29日 09時20分更新)
マッコウクジラの耳骨の構造=一島啓人課長提供

マッコウクジラの耳骨の構造=一島啓人課長提供

「他の哺乳類と同じ」

 県立恐竜博物館(勝山市)の研究員らが、鯨類の耳骨(じこつ)内部の構造を世界で初めて解明した。耳骨の構造は、百年近くにわたり鯨類研究者の間では「一般的な哺乳類とは異なる」と理解されてきたが、「他の哺乳類と同じ基本構造を備えている」ことを証明した研究成果で、関係者らは進化の研究や分類学の標準になると期待している。 (山内道朗)
 研究に携わった同館研究・展示課の一島啓人課長によると、解明したのは脳から三半規管などがある内耳につながる内耳神経が通る穴。三半規管のうち後半規管につながる神経の経路は「単孔(たんこう)」、残り二つの半規管につながる経路は網状になっていて「上前庭野(じょうぜんていや)」と呼ばれる。一島課長らは、コンピューター断層撮影(CT)でマッコウクジラの内耳神経の経路を特定して調べた結果、これまで単孔と考えられていた部分が、「上前庭野」であり、単孔は別にあることを突き止めた。
 単孔や上前庭野がある部分は、上下に隔てる「横稜(おうりょう)」と上から横稜まで延びる「垂直稜(すいちょくりょう)」という骨の壁がある。一般的な哺乳類は横稜が発達し垂直稜が未発達なのに対し、鯨は横稜が未発達で垂直稜が発達していることが分かった。鯨類研究者が鯨の横稜と垂直稜を取り違えていた上、単孔は極めて小さくて分かりにくいことが、研究者の間で構造が誤解されたままだった理由とみられる。
 内耳神経の経路は、上前庭野に卵形嚢膨大部神経(らんけいのうぼうだいぶしんけい)、単孔に後膨大部神経がそれぞれ通り、他の哺乳類と同じ配置と種類であることを確認した。
 耳骨の構造解明は鯨の進化の過程などを追い掛ける上で重要で、一島課長は「研究のスタート地点に立つ発見」と説明。横稜と垂直稜の発達の仕方が、一般的な哺乳類とは逆になっていることについて「これからの研究。三半規管は平衡感覚に関係し、水中は陸上とは違う平衡感覚が求められるなど、理由に考えられることはある」と話した。
 この発見の論文は一島課長と県立恐竜博物館研究員で県立大恐竜学研究所の河辺壮一郎准教授、足寄動物化石博物館(北海道)の前館長、沢村寛さんによる共同執筆で、十八日に米解剖学術誌「アナトミカルレコード」電子版に掲載された。

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