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誰もやらないことを 〔4〕宮田香司さん(49)=福井市大宮町

2021年1月26日 05時00分 (1月26日 11時25分更新)

愛馬「ミラクル流星号」をはじめ、数多くの動物と触れ合いながら暮らす宮田さん=福井市大宮町で(山田陽撮影)


 ヒヒン、ブルル−。小屋から白い馬がにょきっと顔を出した。間近で見ると結構な迫力だ。名前は「ミラクル流星号」。宮田香司さん(49)=福井市大宮町=はその顔を引き寄せ、いとおしそうになでた。「流星のおかげでいろんな出会いがあった」
 神戸市の団地で生まれ育った。狭い部屋に五人暮らし。福井市にある父親の実家は、対照的に広かった。「でかい家に住みたい。田舎で暮らしたい」。それが小学生のころからの夢だった。
 高校卒業後、その夢をかなえる。福井県内の企業に就職した。一年で辞めると、三十代半ばまでいくつかの職を転々とした。宝石時計店、繊維企業、居酒屋、出版社…。「他人が誰もやらないようなことがしたい」。そんな思いが胸にあった。
 しかし、なかなか満足は得られなかった。特に独立した三十五歳からの五年間は苦しかった。そんなとき、旧美山町(現福井市)にある妻の実家で暮らし始めた。動物を飼うのが夢の一つだった。犬、ウサギ、ヤギ、ニワトリ、馬。動物を世話するうちに思った。
 「俺、何しに福井に来たんやろ?」
 二〇一一年から四年間、仲間とともに東日本大震災のボランティアに奔走した。その経験から「食とエネルギーの自給」に関心が湧いた。ふと顔を上げると、自宅の前には広い山林があった。
 一四年の秋、地元の林業家と出会った。特に大きかったのは「自伐型林業」との出合いだ。山主が自ら所有する山林を管理する小規模な林業のこと。「面白そう!」。知れば知るほど引き込まれた。
 一六年春、仲間とともに森づくり活動団体「ふくい美山きときとき隊」を設立。二年後に一般社団法人を立ち上げた。全国の自伐林業家と知り合い、師匠にも出会った。知人や友人に助けを請い、必要な機材をそろえていった。今は、林業や、林業に関する講師の収入で生活を営む。
 「林業なんてできるのか」。当初、周りからは反対にあった。そのたびにハートに火がついた。誰もがやらないことをしたい。そんな志が満たされていくのを感じた。
 動物に励まされ、進むべき道に出合った。今は大きな夢を描く。「限界集落に新しい町をつくりたい」。食もエネルギーも自給自足の町。都会からの移住者も歓迎する町。「心配しなくてもいいよ。福井に来たらいいよ」。コロナ禍で疲弊する日本社会に、こんなメッセージを送ることができたら。そう願っている。 (藤共生)

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