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正代は大一番で思い切りが悪く運に見放されてしまった…雪予報の千秋楽、果たして結末は【北の富士コラム】

2021年1月24日 05時00分

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照ノ富士(右)にはたき込みで敗れた正代

照ノ富士(右)にはたき込みで敗れた正代

◇23日 大相撲初場所14日目(両国国技館)
 14日目、外は寒かったが土俵は熱かった。
 琴ノ若が勝って10勝目。豊昇龍も翔猿を下して5連敗のあと、9連勝は見事。特筆すべきは決まり手である。まさに技のデパートで内掛け、上手投げあり、下手投げあり、寄り切り、押し出しなどなど。あまりにも多彩でとても全部は覚えられないほどである。
 負けているときは幕内の壁にぶつかったかに見えたが、さすがは朝青龍の血が流れているだけあって、やはりただ者ではなかった。血は水より濃いと言うが今後がますます楽しみになってくる力士である。
 翠富士は霧馬山と大熱戦を繰り広げたが、得意の肩透かしを封じられ熱望していた2桁の夢はかなわなかった。それでも翠富士の活躍は相撲ファンに強く印象付けたことは確かである。できることならもう一番は勝ちたいところだ。
 それから明瀬山も元大関栃ノ心に会心の相撲で勝ったのだからたいしたものだ。6連勝のあと5連敗。豊昇龍と真逆の成績だったが、13日目念願の勝ち越しを決め、そして栃ノ心まで破ったのだから立派である。明瀬山は大きな体ではあるが、お世辞にも強そうに見えない。しかし見た目より足腰が強く動きも速い。相撲も積極的だ。
 私が一番驚いたのは彼の仕切りである。普通は握りこぶしにするが、明瀬山はなぜかこぶしではなく、三つ指を付くように仕切る。まるで「今晩は」とお座敷にくる芸者さんのようでなかなか色っぽいのであります。これに私はすっかり「ひいき」になってしまった。
 そうだ、冗談を言っている場合ではない。大栄翔はいつも通り頭で当たると突き放して出た。先手必勝とばかり一気に前に出る。玉鷲は土俵際まで押し込まれたが、懸命に残すと押し返す。すると大栄翔がまともに引いてしまった。やはり早く勝負を付けたい気持ちが出たのであろう。玉鷲は引きに乗じて押し込む。しかし足は出ていない。上体だけの押しではここまでが精いっぱい。すかさず大栄翔が右からはたき込むと玉鷲はたまらず横転した。
 一見危なく見えたが、大栄翔は冷静であった。突っ張りもいつもの回転と腕が伸びていたので、問題ないだろう。あとは正代の相撲を待つのみ。正代と照ノ富士が呼び出しの声で土俵に上がる。両者の表情は両人ともに落ち着いている。時間いっぱいから両力士が正面から正々堂々と立ち上がる。予想通り正代がもろ差しを狙う。照ノ富士は両脇を固めて差し手争い。正代が先に右差し、そして左も入って有利な体勢となった。
 照ノ富士は右手は完全に万歳となり、左上手も引けない。おそらく正代はこの時点で「勝てる」と思ったかどうか。体勢は断然、正代が良い。誰の目にもそう映ったと思う。正代が勝負に出る。そして寄る。照ノ富士はまわしを引けず左が相手の首を巻いて残す。
 正代が慎重に寄る。照ノ富士が掛け投げで残す。計3回同じような展開と勝つチャンスが正代にあったが、最後にきて攻めが慎重になったのは惜しまれる。照ノ富士のうしろに回る勝機もあったが、そのときにはすでに体の動きが止まってしまった。反対に照ノ富士が正代の体勢の崩れを見逃さずはたき込んで決着をつけた。
 正代はせっかくの勝機が何度もありながら、思い切りの悪さが出て大きな一番をものにできなかった。照ノ富士は不利な戦いを強いられたが、少しも慌てることがなかった。これも地獄を見た男の底力であろう。それと豊富な稽古のたまものがものを言った。
 平然としている照ノ富士に対し、正代は息がすっかり上がっている。相手の勢いを利用して勝ちを拾ってきた正代。大一番に前に出ることができなかった。この日ばかりは運に見放されてしまったようだ。それでも優勝がなくなったわけではない。力を落とさず頑張ろう。
 千秋楽の予報は雪が降るみたい。果たして決定戦までもつれるか。まだ楽しみは残っている。それでは風邪など引きませんように、おやすみなさい。(元横綱)
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