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ダルビッシュは“狙い球”と感じてもサイン通り投げた…「試合は忠実に実行する場」今のMLBで超一流となる条件

2021年1月23日 11時42分

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ダルビッシュ有(AP)

ダルビッシュ有(AP)

【データが導くプロ野球新時代・AKI猪瀬さん特別寄稿】
 さまざまなルール変更、無観客試合など、制約が非常に多かった昨季の大リーグ。自己最高の成績といっても過言ではないのが前カブス(現パドレス)のダルビッシュだ。
 昨シーズン終了直後、ダルビッシュにインタビューをする機会を得た。その際、同投手が好調の要因に挙げたのが、チームによる解析データだった。「カブスのスカウト部門やデータ解析スタッフが非常にいい仕事をしてくれた」とダルビッシュ。このクラスの実績と経験を持つ投手ならば、打席に立つ打者の雰囲気や所作で直観的に狙い球がわかるときがある。打者の狙い球だと感じるボールを要求された時、それでも投げたという。なぜならば、捕手から出されたサインの根拠は「データ」だからだ。
 「試合前にデータ解析チームとミーティングをして、その日のゲームプランを決める。試合ではそれを忠実に実行していくこと。それに集中することが大切だと思っていた」。そこには、感覚的、直感的な判断が入り込む余地はないのだ。
 現在のメジャーリーグは、集められた膨大なデータを解析し、選手の成績向上に役立てている。ダルビッシュのように周到に用意されたデータを実戦で完璧に活用できている選手が、超一流になっていく。データ解析の世界は日進月歩で進化を続けている。今季成功を収めたから来季以降も通用するとは限らない。
 変化球のトレンドも同じだ。2003年にヤンキースでメジャーデビューを果たした松井秀喜は、当時のメジャーリーグで全盛を誇っていた打者の手元で鋭く落ちるシンキング・ファストボールへの対応に苦しみ、内野ゴロを量産。ついたニックネームが「ゴロ・キング」だった。
 打者からゴロを量産できるシンキング・ファストボールは、1球で1アウトが取れる球種として、球数制限が厳しいメジャーリーグの投手にとって非常に有効な球種だった。潮目が変わったのが2016年から。「フライボール・レボリューション」と呼ばれる打撃理論が主流になるにつれて、シンキング・ファストボール系の球種の使用頻度が一気に減った。スイング軌道をアッパーにして、上向きの角度を付けてボールを打ち上げる「フライボール・レボリューション」に対して、沈むボールは格好の餌食となってしまったのだ。15年シーズンは変化球の使用頻度1位となる20・4%だったのが、19年は14・3%まで低下した。
 現在の大リーグは、アッパースイングの軌道の対策に有効な、高めのフォーシームと緩急をつけるためのカーブやスライダーを織り交ぜる組み立てをするようになった。
 チーム全体で「フライボール・レボリューション」を取り入れ、成功を収めたのがアストロズ。その申し子の一人と称されるアレックス・ブレグマンは、18年にフライボール・レボリューションを実践して大ブレークを果たした。だが、フライボール・レボルーション対策の配球が多くなるにつれてレベルスイングに再修正するようになったとういう。
 2000年代はじめまでは、大河のようにゆっくりと確実な変化を遂げて来た大リーグだが、スタットキャストが本格的に導入された2015年以降、投手、打者、戦術、トレーニング方法など、さまざまな部門で急速に新たなトレンドが生まれている。今は下火になっているシンキング・ファストボールも、165キロのシンキング・ファストボールを投げるカージナルスのジョーダン・ヒックスの出現により、新たなシンキング・ファストボールのトレンドが生まれてくるに違いない。これまでも大リーグのトレンドは、生まれては消え、波のように繰り返してきた。その周期がデータの進化によって、猛烈に加速していくことは確実だろう。(大リーグアナリスト)

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