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予想外で面白い優勝争い 大栄翔は重圧から硬さが…一方の正代にはつきが回ってきた【北の富士コラム】

2021年1月21日 05時00分

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行司軍配は隠岐の海(左)に上がるも協議の結果、取り直しとなる

行司軍配は隠岐の海(左)に上がるも協議の結果、取り直しとなる

 どうやら優勝争いは混沌(こんとん)状態になってきた。これは私にとって大誤算である。
 まず大栄翔が下位力士相手に2つも星を落とすとは思えなかったこと。上位陣に全勝して下位に全敗の力士を何人も見てはきているが、大栄翔の充実ぶりを見ると、これはまさに予想外と言うよりない。
 宝富士に敗れた翌日は北勝富士を落ち着いて対処したので、尾を引くことはないと確信していたが、阿武咲の左からの突き落としに敗れ、まさかの2敗目。言い訳がましいようだが、私は何度も下位力士ほど気を付けるべきだと注意したのだが、不安が当たってしまった。
 特に阿武咲は同じタイプの、同じように昇進してきた力士である。ある意味、生涯のライバルである。大栄翔の優勝だけは絶対に許せないことだ。何が何でもひと泡吹かせたいところであろう。大栄翔は当たり勝った勢いで攻めて出たまでは悪いところはひとつもなかったが、少し勝負に出るのが早かったかもしれない。
 それと、かいなの回転も連勝中のときに比べ一発一発の重みがなくなっている。強烈なのど輪が姿を消していたようだ。「平常心を強調」と語っていた大栄翔だが、さすがに相撲に硬さが見て取れる。これが重圧というやつだ。夢に見た初めての優勝にプレッシャーを感じない人間がいたら顔を見てみたい。
 12日目は、また押し相撲の明生だ。阿武咲より馬力はないが、相撲は差し身が良く、うまい力士だ。この日の一番からが本当の重圧との戦いである。さあ気力で乗り切れるか大栄翔。足を出すことを忘れるな!
 もう一人の2敗力士、正代は本当についていた。対戦力士は隠岐の海。私の予想は正代の勝ちは動かないと見ていたが、攻められた隠岐の海が右から突き落とすと正代の体が伸び切って、ほとんど裏返しで横転した。隠岐の海のつま先も微妙だったが、正代の体はすでにない。ところが物言いが付いた。そして取り直しとなる。
 その一番は攻められながら、隠岐の海が得意の左四つから体を入れ替え寄り倒した。今度は文句なしで隠岐の海の勝ちと思われたが、またも物言いが付いたではないか。体勢は完全に誰が見ても隠岐の海の勝ちと思ったのだが、隠岐の海の右のつま先が蛇の目を踏み越して正代に大きな星が転がり込んだ。
 まさに星を拾ったとはこのことだろう。一度ならず二度までも。どうやら「つき」が正代に回ってきたのかもしれない。もう終わったことだから言ってもしょうがないことだが、初めの一番はどうも納得がいかない。体が宙に浮き、すでに上体が上を向いている。そのとき隠岐の海の足は出てはいるが、蛇の目は踏んではいないように見えたのだが。
 しかし、審判部が決めたことだから今さら何も言うこともない。それに、これで優勝争いが面白くなったのだから、めでたしめでたしである。それから、隠岐の海はそれほど勝敗を気にする男ではないので、力を落とすことはないので心配なく。それでも懸賞金のことは残念でした。
 そんなわけで原稿に思いの外、時間がかかってしまった。腹が減って死にそう。友人がカキのどて煮セットを届けてくれたので、しんみり一人鍋としましょうか。それではおやすみなさい。(元横綱)
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