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「小児がんの娘 家族で守る」 名古屋の久保田さん 写真作品2年連続最優秀賞

2021年1月19日 05時00分 (1月19日 14時21分更新)
 がん患者と家族、友人を対象に製薬会社が募集するコンテストの写真部門で、名古屋市の会社員久保田将さん(41)の作品が二年連続で最優秀賞に選ばれた。小児がんと闘う娘を撮影し、受賞の一回目は病と向き合う真剣な表情を、二回目は退院後に公園で無邪気に遊ぶ姿をとらえた。間に十カ月を挟んだ二枚の写真は、一丸となって病に立ち向かった家族の軌跡だ。 (小中寿美)

臍帯血移植 闘病の軌跡を記録

 長女ちひろちゃん(6つ)のがんが分かったのは二〇一八年一月、三歳の時だ。大学病院で、神経の細胞にできるがん、神経芽腫と診断された。腎臓の上にある副腎の中心部で発生し、骨髄などに転移していた。
 病状や年齢などから、治療が難しい「高リスク」グループに入り、手術や放射線を組み合わせた標準治療を受けても五年後の生存率は二〜四割と聞いた。妻祐香子さん(34)は「丈夫な体に産めなくてごめんね」と心の中で何度も謝った。
 娘を失うかもしれないと恐れ、絶望する夫婦を勇気づけたのは、ちひろちゃんだ。告知から十日。入院生活が始まり、体は何本もの管につながれた。検査のための手術で傷も。娘には「悪い虫さん、やっつけよう」と言い聞かせたが、思わず涙していると声がした。「大丈夫だよ、ちーちゃん、いなくならないよ」
 衝撃を徐々に乗り越えた祐香子さんは、もっとできることはないかと、同じ病気の子の親に話を聞いてはセカンドオピニオンを受けるなど情報を集めた。知識は医師も驚くほど。同年五月には、へその緒などに含まれる赤ちゃんの血液、臍帯血(さいたいけつ)の移植を治療に加えることで高い成績を上げる名古屋大病院に転院した。

第9回受賞作品 「娘の祈り、親の決意」


 第九回コンテストで最優秀賞を受けた「娘の祈り、親の決意」は、移植前の一九年一月、家族で訪れた神社で撮った。目を閉じ手を合わせるちひろちゃんは、抗がん剤の副作用で髪が抜け、バンダナ姿。「幼いなりにがんと向き合う覚悟が伝わった」と久保田さんはスマートフォンを向けた。「頑張る」。強い意志が感じられ、自身も身が引き締まった。
 移植の経過は良好で同年秋に退院。二年ぶりに行った近所の公園で、ちひろちゃんははしゃいだ。子どもらしい笑顔に、今度は祐香子さんがスマホを向けた。「その後」を報告しようと応募すると再び最優秀賞に。添えたエッセーには「当たり前の日常かもしれないが、私たちには毎日訪れる奇跡」と書いた。

第10回受賞作品 「軌跡の1枚、奇跡の1枚」


 一年十カ月に及んだ闘病生活。今は体調も安定し、幼稚園に通う。ショック、葛藤、娘を守るという決意…。自分たちが歩んだ道のりを、同じように悩む他の家族に生かしてほしいと願う。何より「同じ病気と闘う子の希望になれば」。
 ◇ 
 コンテスト「リリー・オンコロジー・オン・キャンバス がんと生きる、わたしの物語。」は、日本イーライリリー(神戸市)が一〇年から開催。発症後の生き方を表現し、思いを分かち合う。受賞作品は同名のサイトで見られる。三十一日まで第十一回の作品を募集中。(問)事務局=電(0120)781307

医療側との信頼関係 不可欠

 小児がんは15歳未満に見られるがんで、国立がん研究センターによると年間2000〜2500人が診断されている。神経芽腫は白血病、脳腫瘍、リンパ腫に次いで多く、1割弱を占める。医療が進歩し、小児がんの全体で見ると7〜8割は治るようになった。
 がんが分かると、親は医師の説明を理解して子どもに伝え、治療を選択する必要がある。子どもは不安から痛みに敏感になったり、寝付きが悪くなったりすることも。子どもが納得して治療に進むには、親が医療スタッフと話し合い、信頼関係を築くことが不可欠だ。国が指定した名大病院、三重大病院、静岡県立こども病院など15の小児がん拠点病院では対面や電話で相談ができる。
 こうした情報はセンター作成のサイト「小児がん情報サービス」で見られる。

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