TV中継に“データ解説者”…ノビやキレ等抽象的な言葉も可視化 社会人野球界で始まったトラックマン革命

2021年1月18日 11時33分

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社会人日本代表の監督を務める石井さん(右)(本人提供)

社会人日本代表の監督を務める石井さん(右)(本人提供)

  • 社会人日本代表の監督を務める石井さん(右)(本人提供)
【データが導くプロ野球新時代】
 2020年、社会人野球界に一つの「革命」が起こった。日本一を決める都市対抗大会におけるトラックマン(高性能弾道測定器)の導入と、そのデータを使ったテレビ中継だ。これは、今までのデータでは伝えきれなかった選手の力量を表す科学的データを、お茶の間にいながら把握できる時代が到来したことを意味している。
 「コロナで球場に来られない人も多かった。だから、いつもと違った視点で野球の魅力や面白さを伝えたいと思った。そのためにトラックマンのデータを中継で見せ、一般の人向けに解説しようと思ったんです」。社会人野球を統括する日本野球連盟の谷田部和彦専務理事(61)は、こう語る。
 昨年の11月22日~12月3日に東京ドームで行われた都市対抗大会の中継では、アナウンサーと解説者に加え、今回からデータ解説者が参加。プレーごとに選手の思惑を解説者が説明するだけでなく、トラックマンが測定した投手のボールの回転数、打者のスイング速度や弾道などをデータ解説者が説明した。
 「今までは『ノビ』『キレ』など抽象的な言葉が多かった」と谷田部さん。データ解説者がMLBやNPBの選手らと横の比較をするだけでなく、同じ選手の試合中や試合ごとの縦の時間軸を比較することで、一人一人の長所や短所、スタミナなどをデータとして可視化してみせた。
 社会人野球におけるデータの積極的な導入には、社会人日本代表の監督を務める石井章夫さん(56)の存在が大きい。石井さんは17年の代表監督就任後、米国でデータ分析の現状を視察した。その上で、韓国や台湾も「米国流」の野球を取り入れ、進化していることを目の当たりにした。
 「私が選手だったころの韓国や台湾は、良くも悪くも日本式の緻密な野球だった。でも久しぶりに見たら、いつのまにか米国式のパワー化が進んでいた。もちろんパワーが全てではないが、これは取り残されるなと思った」
 そこで日本代表合宿に、いち早くボールの回転数などを可視化できる機器を導入した。各選手がどうすれば成長できるかを、データを交えて説明。データを基に選手の起用法を考えることも積極的に始めた。
 その効果もあってか、日本の社会人代表は19年のウインターリーグで台湾、韓国や若手主体だったNPB代表を退け、初の頂点に輝いた。積極的なデータの活用が正しいことを証明してみせたのだ。そのようなデータの有効性を普及させるため、注目が集まる都市対抗大会でトラックマンが導入されたのだ。
 「プロ野球でもデータ野球は主流だが、そのデータを見られるのはごく少数。一般的にデータが開放されれば大学生や高校生、少年野球までデータを取り入れ、早い段階で目標に向かって正しい成長が可能。そうすれば野球界全体の底上げにつながる」。
 石井さんが力説する通り、データを一般開放した昨年の都市対抗大会は、コロナ禍とは思えないほど話題を集めた。出場した選手だけでなく、プロの選手からも好意的な反響が集まったという。逆境を逆手にとったこの取り組みは社会人野球界にとどまらず、野球界全体の革命の一歩目であることは間違いない。(特別取材班)
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