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古い体質にどう挑むか…プロ野球DeNAの先進性に見出すヒント データが選手の苦手から楽しみに変わるまで

2021年1月17日 11時40分

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昨春のキャンプでビスケル臨時コーチ(中)、西崎1軍マネジャー(右)とともに写真に収まる壁谷チーム戦略部長(球団提供)

昨春のキャンプでビスケル臨時コーチ(中)、西崎1軍マネジャー(右)とともに写真に収まる壁谷チーム戦略部長(球団提供)

【データが導くプロ野球新時代】
 DeNA壁谷周介チーム統括本部チーム戦略部長が2012年に入団した当初、球団の体質は、伝統的プロ野球そのものだった。一橋大学からソニー、ボストンコンサルティングを経て、球団入りした壁谷さんの存在は、違和感そのものだった。
 IT企業を親会社に持ち、フロントは先進的な気質を備えていた。だからこそ採用された。では、プロ野球界という古い体質に対し、どう挑んだか。「そこは結果を出すだけ。目に見える成果を出して『こいつって役に立つんだ』と思ってもらうことが重要。野球界の人じゃなくてもこれだけ貢献できるというところを認めてもらうこと」
 スタートはごく初歩的なものから。例えば、対戦相手の映像は球団と球場に1つずつある端末からのみ入手できた。映像をデータ化し、クラウドに集約して、どの端末からも、いつでも見られるようにした。そうやって成果を出し、データの有効活用を進めていった。
 一例として挙げたのが守備シフトだ。打者の打球の傾向に応じて守備位置を変えること自体は、「王シフト」に代表されるように、昭和のころからあった概念。そこに客観的なデータを持ち込むことで、アウトを取れる確率を高めた。
 「守りやすいし、アウトが取れるという実感があるというのは、守備コーチからも実際の選手からも言ってもらえている。だから続けてもらえる。昨年より目に見えて成果を上げている。データの活用で、正しく判断できるようになった。守備シフトによってアウトにできる確率は確実に上がった」と明かす。
 データの分析が進化し、野球はどう変わったのか。壁谷さんは言う。
 「野球は変わっていない。ただし、今までは直感に基づいて判断していたが、判断するための根拠が増えた。例えば球が速いとか、切れがあるとか、スイングスピードが速いとか、ボールが重いみたいな抽象的な言葉が野球界にはいっぱいある。それが全部理屈で説明できるようになった」
 DeNAの頭脳とも言うべきリサーチ・アンド・ディベロップメントグループには、壁谷さんをはじめ、阪大大学院で金融工学を研究していたアナリスト、スタンフォード大大学院で統計の研究をしたアナリスト、筑波大大学院でバイオメカニクスを研究していたアナリストら、6人が在籍する。
 データ分析は対戦相手だけが対象ではない。選手のスカウティングにも生かされる。スカウトが撮影した映像をクラウドシステムにアップロードする。それをおのおのの端末で共有し、確認する。スカウト会議を待たずとも、全スカウトがすべての情報を共有できるようになった。結果を出せば、球団のカルチャーも変わる。データや最新のデジタル機器がアレルギーでしかなかったのが、今では選手が楽しみになってきたという。
 「トラックマンをはじめ、いろんなシステムを入れても(チームに)違和感がなくなった。『また入れたの』とか『今度は何ができるの』とか。当時GMの高田さん(2019年まで在籍)がITとかにすごく寛容で、喜んで使ってくれた。あの年代でiPadをあそこまで使いこなす人は多分いない」と壁谷さん。
 データ分析は今後、もっと進化していくという。次はAIを使った画像解析の時代に入っていくとも。「カメラを使うことで人間の行動を分析することは、スポーツ界でも起きている。フィールド上のことを可視化、データ化することは野球でもどんどん起きている。まだ道半ば」と米MLBの現状も踏まえてさらなる進化をもくろむ。その先に見据えるのは―。
 「われわれチーム統括本部は世界のスポーツチームの最先端を走り続けようという長期ビジョンを掲げている。そのためにはデータ活用でも世界の最先端を走りたいし、人材もまだまだ集めないといけない」と球団としてのビジョンを明かした。その上でこう断言する。「今やっていることは勝たないと認められない。結果も重要。スポーツは結局そう」。結果を残し球団内に新しい流れを持ち込んだ。次はリーグ優勝、日本一という結果で正しさを証明する。(特別取材班) 
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