<コロナ下の戦略>2021トップに聞く 静岡銀行・柴田久頭取

2021年1月13日 12時04分 (1月13日 12時04分更新)
「メインバンクの真価が問われる年になる」と語る静岡銀行の柴田久頭取=静岡市清水区で

「メインバンクの真価が問われる年になる」と語る静岡銀行の柴田久頭取=静岡市清水区で

  • 「メインバンクの真価が問われる年になる」と語る静岡銀行の柴田久頭取=静岡市清水区で
 −県内のトップ地銀として、昨年のコロナ禍で重点を置いた取り組みは。
 前半は、経済の急激な落ち込みの影響を受けた取引先の資金繰り支援。コロナ関連の融資の実行額は五、六月が最も多かった。需要が一巡した七月からは、取引先の業績回復に向けて、人手不足や販路開拓、デジタル化といった経営課題の支援に局面が変わった。ただ、年末に「Go To事業」が止まったことで、一部の業種では再度、資金需要の山が来ると思っている。
 −コロナ禍が銀行の業績に与えた影響は。
 コロナ関連融資が増えて利息収入が伸びた一方、保険の対面営業ができないなどのマイナス面もあった。政府の支援策で企業倒産が抑えられたこともあり、九月中間決算は若干のプラスで着地できたが、下期から来期にかけては与信費用が顕在化する恐れがあり、引き続き警戒が必要だ。

◆グループ力 今こそ

 −取引先の支援を具体的にどのようにして進めていくか。
 取引先の話をよく聞き、一緒になって悩み、それぞれの課題を解決に導くことが求められる。われわれはコンサルティングや証券、リースなど多様なグループ会社を持っており、いろいろなお手伝いができるのが強み。コロナ禍では特にリースで設備投資をするニーズが高まるだろう。二一年は(多くの県内企業の主要取引行である)メインバンクとしての真価が問われる。
 −コロナ禍の収束が見通せない。県内経済の先行きをどう見るか。
 浜松地区は製造業を中心にかなり上向いているが、観光が中核の東部は「GoTo」の停止により、まだまだ影響を受けるだろう。日銀が昨年十月発表した実質国内総生産(GDP)の成長率の見通しは、二〇年度がマイナス5・5%に対し、二一年度はプラス3・6%、二二年度は同1・6%で、二〇年度の落ち込みを二年かけても取り戻せない計算だ。ワクチンが普及し、世の中のコロナへの警戒が薄れ、訪日客が少しずつ戻ってくるのは二三年ごろになるのではないか。
 −政府や日銀が地銀の再編を促す支援制度を打ち出した。再編は加速するか。
 支援制度の恩恵を受ける目的で合併や統合を進めることはないと思う。日銀の支援制度は再編を促すというより、コロナ禍で打撃を受けている地域を各地銀が支えられるように、経営力を強化するためのものだ。
 −山梨中央銀行と包括業務提携を結んだ。静銀は合併より地銀同士の緩やかな連携を目指す考えか。
 山梨中央銀は山梨県で融資シェア五割を占めるトップバンク。われわれも静岡県で三割のシェアを持つ。それぞれの営業基盤やブランドを維持しながら、互いの良い部分を活用するのが最も効果が早い。近く人事交流を始め、山梨中央銀の行員二人を受け入れる。
 −六月に全国地方銀行協会長に就任する。再編にどのような姿勢で臨むか。
 合併や統合は個別の金融機関の選択であり、協会が誘導することはない。地域金融機関として持続可能なビジネスモデルをつくるための環境を整えることが、業界団体の仕事だ。

<記者の目>緩やか提携 業界内注目

 地方銀行の再編圧力がにわかに高まったのは昨年九月。菅義偉首相が自民党総裁選への出馬会見で「将来的には数が多すぎるのではないか」と唐突に発言したのがきっかけだ。その後、政府・日銀は合併や統合に向けた優遇策を次々と打ち出した。
 だが、県内の地銀や信用金庫の経営者の間で、優遇策が再編を加速すると見る向きは少ない。それぞれ地域で培った顧客基盤と企業文化があり、一体化には労力も時間もかかるからだ。そんな中で、全国屈指の地銀でもある静銀は「緩やかな提携」の道を選んだ。
 業界内で「市場や経営規模が小さい山梨中央銀と組んでメリットがあるのか」といぶかる声があるのは事実だ。互いの独立性を維持しつつ、低金利やコロナ禍の厳しい環境を生き抜くモデルケースとなれるのか。全国の同業者が注目している。 (伊東浩一)

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