支縁の形<7> ブラジル人託児・学習支援施設「ミライ」(菊川市半済)

2021年1月13日 05時00分 (1月13日 05時03分更新)
「ミライ」で学ぶブラジル人の子どもたち=菊川市半済で

「ミライ」で学ぶブラジル人の子どもたち=菊川市半済で

  • 「ミライ」で学ぶブラジル人の子どもたち=菊川市半済で
  • ミライを訪れた加藤順彦さん(左)と小規模保育所について話す黄地潔さん=菊川市半済で
 コロナ禍で利用者が減ったブラジル人託児・学習支援施設「ミライ」(菊川市半済)にまた、子どもたちの姿が少しずつ増えてきた。子どもの学費支援を訴えたクラウドファンディング(CF)が昨年十一月に成功し、地域住民をはじめ百六十一人から二百万円近い支援金が寄せられたからだ。
 施設を運営する日系二世の黄地(おおち)潔さん(58)は「『超』を付けたいぐらいうれしかった。こんなに支援してくれる人がいるなんて、驚きの連続だった」と声を弾ませる。
 菊川市は外国人比率が高く、人口の8%を占める。このうちブラジル人が最も多い。ミライでは一〜十四歳の子どもたちが日本語と母語のポルトガル語を習い、公立学校での学習を補ってきた。
 だが、保護者の多くは派遣社員で、コロナ禍で仕事を失った。月謝を払えなくなり、昨年三月半ばに九十人近くいた利用者は一時、半減した。
 補助金を受けずに独力で運営しているため、以前から経営はぎりぎり。ミライの借金は千六百万円に膨らんだ。そこで挑戦したのがCFだった。失職後に連絡が取れなくなった保護者もいるが、CFの資金を活用して十四人の子どもが通い始めた。

◆県外からも助言者

 CFは、未知の人々を黄地さんに引き合わせた。
 ブラジル人の夫を持つ東京在住の女性が広報担当をボランティアで引き受け、CFホームページの作成や応援メッセージへの返信などすべてを切り盛りしてくれた。
 施設の将来を考える助言者との縁も結んだ。甲府市在住の多文化共生マネージャー加藤順彦(よりひこ)さん(74)だ。
 加藤さんは三十年ほどブラジルで働いた経験があり、山梨県で外国人向けの小規模保育所を二カ所運営している。ミライのCFを報じる本紙の記事で窮状を知り、「このままの運営では黄地さんがすり減る。ノウハウを教えてあげたい」と思い立った。昨年十二月半ば、菊川を訪れた。
 加藤さんは、ミライを公的な補助金を得られる市認可の小規模保育所に切り替えることを提案した。「CFは『つなぎ融資』。利益が出ないと事業は継続できない。集まった資金を糧にして将来構想を打ち出すのが大切だ」
 実現に向けたハードルは高い。今でも保育士らの確保が困難で、施設の基準を満たすには高額な投資が必要だ。日々多忙を極め、数年がかりの複雑な手続きに向き合うには時間が足りない。加藤さんから話を聞いた黄地さんは「菊川では人材確保ができない」と悩むが、「とても参考になった」と喜んだ。

◆継続し運営見守る

 加藤さんは「小規模保育所などの情報が外国人の経営者に届いていないのが残念。地域の日本人が施設と行政の間に立ってくれないと難しい」と言う。今後も継続して相談に乗り、ミライを見守るつもりだ。
 運営に課題は多いが、CFを契機にミライには「応援団」ができた。希望の光は差している。黄地さんは「こうした出会いを、ちゃんと生かしていきたい」と力を込めた。
  (河野貴子)

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