コロナと性暴力 多様な対策で防ぎたい

2021年1月12日 05時00分 (1月12日 05時01分更新)
 コロナ禍で性暴力被害が増えている。未成年者が家に居づらくなり、SNSを介して被害に遭うケースもある。抑止には一時保護の拡充や性犯罪をめぐる刑法改正など、多角的な取り組みが必要だ。
 「神待ち」。電子掲示板で見かける言葉だ。家を出た女性が食事や宿泊先を提供してくれる男性を求めるシグナルである。こうした書き込みが増えているという。
 コロナ禍に伴う親の経済的な困難から家庭の空気がピリピリし、子どもは通学機会やアルバイトを失って家に居がちになる。専門家はこれを未成年者たちが家出に走る典型的な状況として例示している。その後、風俗ビジネスに誘導される例も少なくない。
 橋本聖子男女共同参画担当相は昨年十一月、四月から九月の性暴力に関する全国のワンストップ支援センターへの相談件数が、前年同期比で15・5%も増えたと発表し、背景にコロナ禍を挙げた。
 これは世界的な傾向でもある。国連女性機関も感染防止で住環境が閉鎖化される中、安全や健康、金銭面での不安が女性への暴力を増やしていると警告している。
 性暴力を生む社会の下地をコロナ禍が刺激している構図だ。すぐに取り組むべき施策はある。
 女性らの一時保護施設(シェルター)や相談センターの拡充は急務だ。多くの施設はNPOなどが運営しているが、職員の給与や家賃などの負担は重く、一層の公的支援が求められている。性被害者を支える各地の「ワンストップ支援センター」も医療機関との併設が望ましいが、財政上の理由で併設されたセンターは少ない。
 性暴力抑止のためには、刑法の性犯罪規定の緩和も重要だ。昨年は一審で無罪だった性犯罪事件が相次いで上級審で有罪に覆った。この流れは二〇一七年の法改正の不十分さを印象づけた。
 現行法では性交を強いる犯罪は加害者の「暴行・脅迫」や被害者の「心神喪失・抗拒不能」が適用条件だ。現在、法務省の検討会は「同意のない性交」は全て罰する形への改正を議論している。冤罪(えんざい)の懸念もあるが、一部の国は判断基準を細かく示し、導入している。大いに検討すべきだ。
 性教育の充実も待ったなしだ。国の学習指導要領では中学校で性交や避妊は教えない。海外と比べても格段に遅れている。「いのちの教育」は不可欠ではないか。
 新型コロナの感染防止とともにコロナ禍のストレスから社会的弱者を守る施策を充実させたい。

関連キーワード

PR情報