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「フレイル」防げ 要介護予備軍が筋トレ

2021年1月12日 05時00分 (1月12日 05時03分更新)
有酸素運動で筋力強化や心肺機能を高めながら、計算や漢字の読み書きをする利用者の女性(右)=浜松市中区で

有酸素運動で筋力強化や心肺機能を高めながら、計算や漢字の読み書きをする利用者の女性(右)=浜松市中区で

 新型コロナウイルス感染防止のために外出を控える人が増える中、高齢者の身体機能や認知機能が衰える「フレイル(虚弱)」を防ぐ取り組みに注目が集まっている。鍵となるのは有酸素運動と筋力トレーニング、たんぱく質の摂取。専門家は「認知症や持病を悪化させないためにも食事と運動で“貯筋”を心掛けてほしい」とアドバイスする。 (久下聡美)
 浜松市中区の女性(87)は四年ほど前にパーキンソン病を発症。庭の段差や階段で転びやすくなり、日常の複雑な動作に介助が必要な「要支援2」の判定を受けた。新型コロナの感染拡大で外出は自粛しているが、昨年六月から自宅近くの健康教室「アクティブ富塚」で、体力や筋力の強化、脳機能向上を目的に週一回体を動かす。
 教室は送迎付きで看護師や理学療法士、トレーナーが常駐。女性は体重、筋肉量、体脂肪、骨密度などを測定した後、計算や漢字の読み書きをしながら自転車型トレーニング器具を二十五分、背筋や足を鍛えるケーブルマシンを約十分、屋内外での歩行を約三十分、下半身を鍛えるクロストレーナー八分など計二時間のメニューをこなした。機能訓練指導員小倉和稔さん(32)は「この半年で筋力がつき、転びにくくなっている。利用者さん同士の会話で表情も豊かになった」と見守る。女性は「コロナにも病気にも負けない体を取り戻したい」と笑顔を見せた。
 加齢や病気で心身の活力が低下して生活機能に支障が出る一方で、適切な介入や支援があれば回復可能な状態をフレイルと呼ぶ。国立長寿医療研究センターは昨年五月、六十五歳から八十四歳の高齢者千六百人に行った調査を公表。コロナ感染拡大前と拡大後の身体活動量を調査した結果、「一週間あたりの身体活動時間」は約三割となる一時間減り、運動を意識的に実施できていた高齢者は半数にとどまっていた。同研究センターは「運動が継続できず、身体活動量が減少している高齢者が多く、新型コロナの収束後に要介護の高齢者が増加する可能性がある」と指摘している。
 浜松医療センター呼吸器内科医長で日本呼吸器学会指導医の小笠原隆医師(46)は、フレイル予防策として(1)週に二時間程度の軽い運動 (2)週に二回の筋力トレーニング (3)一日あたり体重×一・二グラムのタンパク質摂取を推奨する。「理想は一日一万歩だが、座っていることが多い方は、立ち上がり、五分の散歩でもいい。外に出て少しずつ筋肉を動かして」と話す。「身体活動性が高い人ほど、同じ病気にかかっても早く退院でき、命の危険も少なくなる。感染対策をしながら“貯筋”をしてほしい」と呼び掛けている。

 <フレイル> 日本老年医学会が2014年に提唱した概念。健康な状態と要介護状態の中間に位置し、身体的機能や認知機能の低下が見られる状態のことを指す。適切な治療や予防を行うことで要介護状態に進まずにすむ可能性がある。加齢などで筋力や活動量が減ると、食欲が湧かないため、食事の摂取量が減り低栄養状態を招くと、さらに筋肉量が減少する。この悪循環を「フレイル・サイクル」と呼び、転倒や骨折あるいは慢性疾患の悪化をきっかけとして要介護状態になる可能性が高くなる。


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