アマビエ人形で願い 思い出ピアノ再開を もてなしドーム地下広場
2021年1月10日 05時00分 (1月10日 11時23分更新)
金沢の西川さん手作り
疫病退散の御利益があるとされる妖怪「アマビエ」が、金沢駅東もてなしドーム地下広場に現れた。といっても、毛糸でできたふわふわの人形だ。誰でも弾けるよう金沢市が設置した「まちかど思い出ピアノ」の上に鎮座する。新型コロナウイルス感染防止のため禁じられたピアノの利用再開とコロナ収束を願い、一人の女性が手作りした。 (堀井聡子)
人形を制作したのは同市高柳町の西川由起子さん(66)。直径六センチほどの黄色い球体に、人魚のようなオレンジ色の長い髪、くちばしと三本の足を取り付けた。ほとんど毛糸で作られ、色とりどりのうろこはフェルトを貼って表現した。「太陽みたいな温かい色がいいと思って。ここに置いたら、いろんな人がピアノに関心を持ってくれそう」。まだ鍵がかかったままのグランドピアノを前に、ほほ笑んだ。
人形を置いたきっかけは本紙「Your Scoop〜みんなの取材班(ユースク)」で、ピアノの利用再開のめどが立っていないことを報じた昨年十一月三十日付の記事だった。市内三カ所にあるピアノは昨春以降、イベント利用を除いて弾けなくなっている。
昨年十月からピアノ教室に通っているという西川さんには、グランドピアノへの憧れもあった。発表会は夢をかなえる絶好のチャンスだったが、コロナ禍で中止になった。「教室はアップライトピアノ、自宅は電子ピアノ。駅前で弾けると知ったときには、感染対策で使えなくなっていた」
毛糸人形は二十年来の趣味。昨年九月から、五体のアマビエを「アマビエんじゃー」と名付けて街中を背景に写真を撮り、会員制交流サイト(SNS)のツイッターに投稿している。思い出ピアノには昨年十二月中旬、市に了解を得て置いた。「このピアノを弾きたい人々の思いを込め 一日も早いコロナウイルス収束を願って(中略)置かせていただきました」。こうつづった紙も添えた。
市によると、再開のめどは今も立たない。西川さんは「教室には、ストリートピアノを弾く人に憧れて通い始めた男の子もいる。『楽都金沢』で音楽の土壌を育むためにも、消毒液を置くなど対策をして再開してほしい」と望んでいる。
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