<コロナ下の戦略>2021トップに聞く 浜松ホトニクス・晝馬明社長

2021年1月9日 11時41分 (1月9日 11時45分更新)
「新しいネタ探しを全世界でやる必要がある」と話す浜松ホトニクスの晝馬明社長=浜松市中区で

「新しいネタ探しを全世界でやる必要がある」と話す浜松ホトニクスの晝馬明社長=浜松市中区で

  • 「新しいネタ探しを全世界でやる必要がある」と話す浜松ホトニクスの晝馬明社長=浜松市中区で

◆真の国際化へ好機

 −前期は海外当局の移動制限の影響で営業活動が停滞し、減収減益だった。新型コロナの変異種が見つかり、渡航は引き続き難しい。どう克服するか。
 従来はまず営業マンが海外の顧客の所に飛び、次に技術者が行く形だったが、現地の競合他社に比べてやりとりに時間がかかるのが欠点だった。オンライン会議で技術者が一緒に参加できるようになり、むしろスピード感は上がった。全く新しい引き合いに対し、競合との差を縮められる。
 (現地の顧客と迅速に試作を始める)ラピッドデザインセンターの機能を、米国に続いて欧州や中国でも強化したい。研究、開発、生産の拠点はほとんどが浜松市近郊だが、真のグローバル企業にする好機だ。
 −今期は光センサーや光源の需要回復を見込み、増収増益を計画している。主な分野の見通しは。
 自動車や半導体の業界で検査関連の需要が増えると考えている。車は電動化に向けたバッテリーの非破壊検査用が中国を中心に、半導体は次世代通信規格「5G」やIoT(モノのインターネット)の分野が米中と韓国で、共に順調に伸びると見ている。
 医療系はがんなどを診断する陽電子放射断層撮影装置(PET)検査関連の需要が元々あり、コロナ禍で止まった分の売り上げが増えるだろう。PCR検査用も前期ほどではないが、引き合いは続くと思う。
 −昨年十二月に執行役員制度を導入した意義は。
 役員ごとにプロジェクトを与え、進捗(しんちょく)を発表してもらう。社内のIT改革のほか、企業の合併・買収(M&A)、大学発スタートアップへの投資活動などがテーマだ。われわれの事業の構造は光技術をさまざまな分野に応用する逆ピラミッド形。緊急性はなくても、五年後、十年後に重要となる新しいネタ探しを全世界でやらなければならない。
 −新型コロナ対策の財政出動で研究機関の予算が削られ、受注が減る懸念はないか。
 (浜ホトの光電子増倍管を使う)素粒子ニュートリノの次世代観測装置「ハイパーカミオカンデ」の計画は動きだした。ただでさえ日本は各国に比べて研究予算が少ない。将来を担う人たちがやる気を失わないように、イノベーションを支援する研究は不可欠だ。
 −浜ホトと関係が深い静岡大浜松キャンパスの工学部・情報学部と浜松医科大の統合新大学化が宙に浮いている。
 (浜松に比べて)静岡が取り残されると思われるのかもしれないが、危機感は県西部の大学にこそある。国が大学をランク分けして研究開発費を絞る中、生き残るには(医工連携など新産業創出に向けた)地域貢献を選ばざるを得ない。
 (晝馬社長が理事長を務める)光産業創成大学院大は、医療ベンチャーを育成する研究領域「バイオフォトニクスデザイン分野」を昨年新設し、医療関係者が既に学んでいる。県を西と東で区別せず、大きな枠組みの協力関係が必要だ。

<記者の目>「現地で試作」活路に

 コロナ禍で産業用機械メーカーが特に困るのが、感染拡大を防ぐための移動制限だ。営業担当者や技術者が取引先に赴けず、商談や試作開発などのやりとりが滞る。売上高の約7割を海外向けが占める浜松ホトニクスも、前期の業績悪化に影響が色濃く表れた。
 製造ラインに組み込む装置は、製品を届けるだけでは取引は完了しない。技術者が現地で組み立て、システムを立ち上げる作業が必要になる。晝馬社長は「前期に売り上げの計上が間に合わなかったものがある」と歯がゆさを口にする。
 欧米の競合メーカーに負けまいと「試作の現地化」を進めるラピッドデザインセンターの取り組みは、そんな逆境を克服するための活路にもなっている。「研究場所は世界にある」。晝馬社長が言うように、時間や距離を縮める努力が、新常態には欠かせない。 (久下悠一郎)

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