景観育んだ市民の力 重層的な建築群がつくる都市・金沢

2021年1月9日 05時00分 (1月9日 11時14分更新)
「兼六園周辺文化の森」の模型を前に「金沢の建築文化を支えたのは市民の力」と話す竹内申一・金沢工業大教授=金沢市寺町の金沢建築館で

「兼六園周辺文化の森」の模型を前に「金沢の建築文化を支えたのは市民の力」と話す竹内申一・金沢工業大教授=金沢市寺町の金沢建築館で

  • 「兼六園周辺文化の森」の模型を前に「金沢の建築文化を支えたのは市民の力」と話す竹内申一・金沢工業大教授=金沢市寺町の金沢建築館で

労作模型や写真 金沢建築館

 二〇一九年に金沢市寺町にオープンした谷口吉郎・吉生記念金沢建築館で、三回目となる企画展「金沢のチカラ−重層する建築文化」が開かれている。江戸の藩政期から令和まで、重層的に都市としての金沢を形成する建築物を、十三の模型や写真、設計図などで示すと同時に、時代の節目ごとの市の施策や市民の活動によって、建物や景観が継承されてきた歴史を紹介している。
 展示のメインになっている十三の模型のうち、企画展の実行委員長を務めた金沢工業大の竹内申一教授が、研究室の学生らと新たに制作した金沢城や兼六園を中心とした市街地の「兼六園周辺文化の森」の模型(五百分の一)は、建物を建設された時代ごとに色分けした労作。ひがし茶屋街の模型(五十分の一)は、木造建物の連なりによって、街全体で一つの巨大な木造建築のようになっているのが分かる。
 江戸期では金沢城内の建物や寺院、古民家、明治期は尾山神社神門や石川県立歴史博物館(旧金沢陸軍兵器支廠)、大正期の犀川、浅野川の両大橋や市立玉川図書館近世史料館(旧専売公社)などを紹介。昭和では、日本の近代建築を代表する建築家の辰野金吾や米国出身のボーリズによる建物を残そうという運動があったことを伝える新聞記事なども展示した。
 金沢21世紀美術館と並んで、金沢の平成時代を代表する建築の一つと言える鈴木大拙館は模型のほか、設計した谷口吉生さんのスケッチを展示。谷口さんとしては珍しいというメモが記され、「斜面緑地を背景とした石垣とみずによって金沢固有な景観を創造する」などと読み取れる。
 令和時代では、現在、金沢大工学部跡地(同市小立野)に建設が進められている金沢美術工芸大の新キャンパスや新石川県立図書館の模型も見どころ。
 金沢は、市が一九六八年に全国に先駆けて伝統環境保存条例を施行するなど、建築文化を残す土壌を育んだ先進地。景観に配慮した優れた建築物を顕彰するため七八(昭和五十三)年に始まった金沢都市美文化賞を受賞した四百五十九件を全て写真で紹介している。
 今回の展示について、水野一郎館長(金沢工業大教授)は「開館前から金沢市民目線の展示を必ずやりたいと考えてきた」。タイトルの「金沢のチカラ」について、「力の『チ』に、北陸の雪国である風土を意味する『地』、市民の力である『血』、江戸時代から守ってきた美意識を示す『知』という意味を込めた」と説明して、金沢の建築文化を育んできたのが市民力であることを強調した。
 会期は九月十二日まで。毎週月曜日休館(月曜が祝日の場合は翌日)。(松岡等)

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