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抜けた乳歯 どうしよう

2021年1月8日 10時37分 (2月12日 15時22分更新)
六歳の息子の乳歯が抜けました。この歯をどうするか、悩んでいます。私が幼いころは、下の歯は屋根の上に投げ、上の歯は土に植えましたが、今、屋根には太陽光パネルが載っており、すぐ滑り落ちてきそうです。息子は全部取っておきたいそうで、捨てるのはためらわれます。(岐阜県、34歳)
◇こうしたら!
6歳の息子の抜けた乳歯を取っておきたいが、どうしたらいいか―。1月8日付で掲載した岐阜県の母親(34)の相談に、読者からさまざまな提案があった。知恵を絞った保管方法は、どれも歯への愛情が深まりそうだ。抜けた乳歯を再生医療に役立てる動きもあるという。
乳歯が抜けたら、丈夫な永久歯が生えてくるよう願いながら、下の歯は屋根の上へ、上の歯は縁の下へ―という言い伝えを聞いたことがある人は多いだろう。声を寄せた名古屋市東区の女性(47)もその一人だ。八歳と六歳の娘がいるが、マンション住まいで風習通りにはできない。そこで、中が細かく仕切られた乳歯ケースを通販で購入。水で洗い、乾かした歯を収めるようにしている。

ケースに入れて

「きれいな状態で保管したい」と娘たちは競って歯磨きをするようになった。
乳歯ケースは多くの種類が売られている。通販大手の千趣会が運営する「ベルメゾンネット」は十年以上前から乳歯ケースを販売。今は七種類で、価格は二千二百~八千八百円という。
市販品を使うという声が多かった一方、自分で工夫する人も。三重県桑名市の女性(47)は、息子の歯が抜けるたびに、メモ用紙に日付と上下左右の位置を書き込んだ上で保管していた。全て抜けた小学五年の夏休み、それを使って息子が取り組んだ自由研究が口の中の立体模型だ。

立体模型で

歯茎を模して紙粘土で作った型に抜けた乳歯を差し、歯の生え替わる仕組みも書き添えて提出した。「虫歯が一本もなかったから、模型を作る気になったよう」と女性。「嫌がる中、無理やり仕上げ磨きをしたこともあったが良かった」と振り返る。
愛知県豊橋市の女性(60)は、娘(23)が幼い時、抜けた乳歯を、生えていた位置通りにのりで紙に貼り、いつ、どんな状況で抜けたかを書き込んで保管した。ポツンと空いたところには「学校でぬけました。ポケットに入れてもってかえろうとしましたが、なくなりました」という文章が。娘は「残念に思ったのを覚えている。抜けるまで健康な歯でいたいと歯磨きに気をつけた」と懐かしそう。乳歯の保管をきっかけに歯に興味を持ち始め、今は歯科衛生士として働いている。
「抜けた乳歯は宝物のような気がした」とつづったのは、浜松市中区の女性(27)だ。ジャムの空き瓶に入れて机の中にこっそりしまっていたという。一本一本増えていくのがうれしかった。眺めるうちに愛着が湧き、積極的に母親に仕上げ磨きをしてもらうように。「今も虫歯は一本もない」と喜ぶ。

愛知学院大歯学部教授の本田雅規さん(56)によると、乳歯は計二十本。個人差はあるが、六歳ごろから抜け始め、十二歳ごろまでに抜け終わる。

本田雅規教授

乳歯がグラグラすると、気になって触ってしまう子は多い。「触っても問題ないが、家で無理に抜くのはやめて」と本田さん。永久歯が出てくると、歯茎の下のあごの骨に埋まっている乳歯の歯根が溶け、自然に抜けるからだ。
ぐらついていても抜けないのは、歯根の一部が残っているためと考えられる。無理に抜くと、乳歯が途中で折れる恐れも。乳歯の下で育っている永久歯の上にあごの骨が形成され、生えるのを邪魔する可能性もある。ただ、乳歯が抜けないまま、後ろや横に永久歯が出始めたら歯科で相談した方がいい。放置すると歯並びに悪い影響が出る。
生え替わりの時期は、乳歯が抜けてできたくぼみに細菌がたまりがちだ。痛みを訴える子も多く、歯磨きを嫌がって虫歯になりやすい。そうした時期に「抜けた乳歯を保管し、歯を大事にする意識が高まるのはいい」と強調する。
乳歯を医療の研究に活用する動きも。再生医療の研究・創薬に取り組む「ジーンテクノサイエンス」(東京)は二〇一二年から、無償で乳歯を一人一本ずつ提供してもらう「献歯」をスタート。これまでに千人以上が協力した。
歯の内部の歯髄から、さまざまな細胞に分化する能力を持つ幹細胞を採取、培養。骨や神経の再生を促す治療薬の開発を、大学や企業などの研究機関と進めている。治療薬の対象となるのは、口の周囲に変形がみられる口唇口蓋裂など。国内約二千の認定歯科医院で抜歯することが条件だ。
研究者らでつくる「乳歯保存ネットワーク」(岐阜市)は一五年から、一一年の東日本大震災で起きた東京電力福島第一原発事故による子どもへの影響を、抜けた乳歯を使って確認しようと取り組む。放射性物質ストロンチウムの量を測定し、地域や生まれた年による放射能汚染の違いを明らかにするのが狙い。目標は二千~三千人分で、これまで約五百人分を集めた。測定結果は提供者に通知される。詳細はネットワークのホームページで。

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