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馬と牛…同じ草食動物でも全然違う消化吸収の仕組み 獣医師記者がやさしく“噛み砕いて”説明します

2021年1月8日 06時00分

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草を食べる牛。同じ草食動物でも牛と馬では消化吸収の仕組みがまったく異なる

草を食べる牛。同じ草食動物でも牛と馬では消化吸収の仕組みがまったく異なる

◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」
 今年は丑(うし)年である。「牛飲馬食」という言葉は、よく飲み、よく食べるというたとえ。ただし、同じ草食動物でも両者の消化吸収の仕組みはまったく異なる。
 そもそも草食動物の主食たる「草」は、そのままでは栄養にならない。主成分のセルロースなどを分解する必要があるが、馬も牛も自身にセルロースを分解する酵素を持っていないことで、消化管内に“飼っている”微生物の力を借りている。セルロースを分解して糖を取り出す微生物もいれば、微生物自身の活動の結果としてタンパク質・アミノ酸や揮発性脂肪酸が生じている。馬や牛は、それらの微生物が分解したものを一部横取りする形で取り込んでいるのだ。
 こうした微生物の働き(発酵)は牛では主に第1胃で行われているが、馬では大腸で行われている。両者の決定的な違いは、消化吸収を行う小腸の前後であることだ。“発酵槽”の位置の違いは、栄養の吸収効率にも大きな影響がある。牛は小腸より前で発酵を行うので、発酵産物としての栄養素は小腸から吸収される。だが、馬では大腸で微生物によって作られた栄養素のうち、揮発性脂肪酸は大腸壁から吸収できるが、タンパク質・アミノ酸のほとんどは流れていって直腸、肛門と経てボロとして外に出る。
 馬と同じく大腸(特に盲腸)が発酵槽のウサギは糞(ふん)を食べることで口経由で小腸にこれらを戻し、この問題を解決している。馬は出生直後の子馬を除いて糞を食べない。馬の発酵槽で微生物が作ったタンパク質は無駄になっているのか、あるいは未知の経路で使われているのか。実は、いまだ残る馬の謎の一つである。

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