本文へ移動

1年分の思いぶつける コロナで開催延期に県勢 

2021年1月5日 12時11分 (1月5日 12時32分更新)
 新型コロナウイルス感染拡大の影響で1年延期になった東京五輪・パラリンピックが、今夏に開かれる。いまだコロナの収束は見通せず、ほとんどの競技で国際大会は未開催。代表選手が決まっていない競技が多い中、県勢選手たちは己と向き合い、準備を進めてきた。過去に例のない苦しみを味わった1年分の思いを、2021年にぶつける。 (谷出知謙)
 昨年三月に五輪の延期が決まり、県勢は有力選手三十人弱に影響。代表を決める国際大会は全競技で相次いで中止になり、今も世界との実戦の場はほとんど再開されていない。代わりに増えたのは、普段の練習時間。単純に大会が一年延期になったのではなく、モチベーションの維持が困難な環境下で選手たちは努力を続けてきた。
 日本代表は、ホッケーやバスケットボールといった団体競技は合宿などを通して選考され、ボートやフェンシングなどの個人競技は国際大会での結果を踏まえて決まっていく。
 県勢で五輪内定を勝ち取ったのは、自転車トラック種目の男子ケイリンの脇本雄太(日本競輪選手会、科学技術高出身)のみ。多くの競技で代表選考の詳細が明らかになっていないが、勝負の年を迎えた。コロナ禍を克服し、夢の舞台で躍動するのは誰か。戦いが再開する。

感謝胸に飛躍目指す

 バドミントン・山口 


準優勝した全日本総合で手応えを感じ、一層の飛躍を期す山口=東京・町田市立総合体育館で


 バドミントン女子シングルスの山口茜(再春館製薬所)にとって、二〇二〇年は練習漬けの一年だった。世界を転戦する日々から一転、公式戦はすべて中止された。熊本県の所属チーム体育館で男性コーチと連日ラリーを打ち合う日々。そんな中で、地元を未曽有の災害が襲った。
 昨年七月、練習拠点に近い熊本県南部で発生した豪雨災害。死者は六十四人、行方不明者も六人に上った。山口もボランティアに駆けつけた。被災地で出会ったのは大変な状況の中でも「茜ちゃん、頑張って」と声を掛けてくれる人たち。「(声援に)応えていきたい」。そう強く思った。
 十二月末。全日本総合選手権大会が東京都で開かれた。山口が「成長を確認したい」と心待ちにしていた大会だ。決勝では奥原希望(のぞみ)(太陽ホールディングス)にフルゲームの末敗れたが、決勝まで四試合は危なげなくストレート勝ち。「成長を少しは見せられた」と納得の様子だった。
 大会終了後の記者会見。山口が口にしたのは感謝だ。「当たり前のことが当たり前じゃないと知った一年だった。今大会も多くの支えがあったから開催できた。生きていく上で、バドミントンをする上で、たくさんの支えがある。その感謝を結果やプレーで表したい」
 日本女子の両エースとして五輪でメダルを目指すライバルと、紙一重の勝負を演じた全日本総合。コロナ禍の中での取り組みに、確かな手応えを感じることができた大会だった。「足りないところを練習して、さらに成長したプレーを見せたい」。二一年、感謝を胸に飛躍を目指す。 (藤共生)

苦しんだ分だけ洗練

 ビーチバレー・村上 


大きな挫折を乗り越えた村上=小浜市の若狭総合公園で


 ビーチバレー女子の村上めぐみ(オーイング)は「自分のパワーの源が増えた」と心底思う経験をした。コロナ禍による緊急事態宣言が解けて間もない昨年七月。百戦錬磨の三十五歳が「一気に駄目になった」。
 本格的に練習を再開した中での出来事だった。トレーニングの最後。追い込みをかけるところで頑張れない。自分では精いっぱいのつもりでも、ペアを組む石井美樹(荒井商事・湘南ベルマーレ)とコーチには見抜かれていた。「そんなんじゃ、やっても意味ないからって言われた。気持ちが折れていた」
 公式戦が軒並み中止になり、刺激を受ける場を失った。「今までは勝ちたいって気持ちが大きくて。試合で勝って頑張ろう、負けたらもっと頑張ろうと。そんなモチベーションがなくなった」。世界を見据え、三年前から毎週のように国際大会を転戦してきた。良い意味で試合に追われていたから、「空白のシーズン」がつらかった。
 一週間、何もしない時間をつくり、どう生きていくか悩んだ。そんな自分を客観的に見てほしいと、神奈川・鎌倉の円覚寺をいきなり訪問。「お話させていただきたい」という願いに住職が応じてくれた。「今日やるって決めても、明日やめてもいいんだよ」。言葉が胸に響いた。先を見据えて答えが出ないなら、今思う気持ちを大切にしようと学んだ。
 「五輪があるからじゃなくて、一週間、一カ月と短いスパンで細かく目標を決めた」。徐々に立ち直り、トップ選手が集まった十一月のジャパンツアーで優勝。内容は反省点ばかりだったが、国内首位ペアが復活の歩みを刻んだ。
 選手であることを感謝したシーズンだ。「自分一人だとやめていた。勝つだけじゃなくて、私たちの結果で喜んでくれる人がいる」。五輪代表を決める道はまだ定かではないが、揺るがない。苦しんだ分だけ、洗練された。
  (谷出知謙)

関連キーワード

PR情報