<備える> 東日本大震災10年 東北の震災遺構と伝承施設

2021年1月4日 05時00分 (2月2日 16時38分更新)
 災害の学びがあれば、失われなかった命もあった−。東日本大震災から三月で十年となるのを前に、被災した東北の太平洋岸を中心に震災遺構や伝承施設の整備が進んでいる。被災の実情や教訓を伝えることこそ、次の災害を乗り越える備えにつながる。広大なエリアに施設が散在していることから、案内マップづくりなど遺構や施設を結ぶ「3・11伝承ロード」と呼ばれる産官学民連携の取り組みも始まっている。 (梅田歳晴)

登録240件 産官学民連携、整備進む

 東日本太平洋沿岸五百キロに及ぶ範囲が被害を受けた東日本大震災。約二カ月後、国の東日本大震災復興構想会議がまとめた「復興構想七原則」の一番目に「伝承」の必要性が記載された。被災地では、この十年、津波の襲来を記したモニュメントや伝承看板が設けられ、被害を受けた遺構の保存・整備が進んだ。
 これらの伝承施設をネットワーク化するのが「3・11伝承ロード」だ。国土交通省東北地方整備局や青森、岩手、宮城、福島の各県などでつくる「震災伝承ネットワーク協議会」が、民間団体や地方自治体が申請した施設を「震災伝承施設」として登録する。
 被災地を訪れる人が広大なエリアに点在する施設を巡り、効果的に東日本大震災の教訓を学べる仕組みをつくるのが狙い。地域の防災力向上や被災地振興などにつなげる目的もある。登録施設は二〇二〇年十月時点で二百四十件。青森六件、岩手八十一件、宮城百十九件、福島三十四件。案内員が配置されているかや駐車場の有無などの基準で三段階に分類される。
 こうした基準で最も充実度が高い「第三分類」に登録されている施設は四十六件。建物四階まで浸水した「津波遺構たろう観光ホテル」(岩手県宮古市)、斜面を駆け上がった津波の高さが一目でわかる「震災メモリアルパーク中の浜」(同市)、犠牲者を慰霊・追悼する「釜石祈りのパーク」(同県釜石市)、児童や教職員、地域住民三百二十人が避難した「震災遺構仙台市立荒浜小学校」(仙台市若林区)などが含まれる。
 一九年八月に設けられた「3・11伝承ロード推進機構」(仙台市)がマップや案内標識づくりや企業・団体向け研修会の企画など震災伝承施設を活用した事業を展開している。機構の原田吉信事務局長(62)は「施設それぞれにさまざまな教訓がある。施設を多くの人に巡ってもらうことで、教訓の学びや慰霊、震災や人生の振り返りの機会にしてもらえれば」と言う。
 マップは東北三県を中心に約五万部を、道の駅や観光施設などに置く。原田さんは「伝承施設を巡る旅などで活用してほしい」と呼び掛けている。同機構のホームページで各施設を紹介しているほか、企業・団体の研修の相談なども受け付けている。
 問い合わせは同機構=電022(393)4261=へ。

横のつながり課題 来館者調査「遺構より観光地へ」

 「3・11伝承ロード」で第三分類に位置付けられ、二〇一九年九月に開館した岩手県陸前高田市の東日本大震災津波伝承館。これまでに二十八万人超が訪れ、来館者が沿岸地域を訪れる「玄関口」としての役割も期待されている。ただ、伝承館を起点とした訪問先として、来館者は県内の他の震災伝承施設より観光施設に関心を寄せていることが調査で判明。伝承施設の「横のつながり」の構築が課題となっている。
 調査は同館が岩手県立大と共同で、二〇年九〜十月に来館者六百人を対象に実施し、そのうちの三百七十九人分を集計した。岩手県内の主な震災伝承施設と観光施設を選択肢として示し、伝承館から訪れた、または訪れたい施設を複数回答可で尋ねた。
 観光施設は千百四件の回答があった一方、震災伝承施設は五百九十八件にとどまった。観光施設で最も多かったのは浄土ケ浜(宮古市)で百六十八件。世界遺産平泉(平泉町)、龍泉洞(岩泉町)、花巻温泉・宮沢賢治記念館(花巻市)なども百件以上に上った。
 震災伝承施設では、東日本大震災津波伝承館近くの「奇跡の一本松」が二百九十六件で最多。「いのちをつなぐ未来館」(釜石市)六十八件、「津波遺構たろう観光ホテル」(宮古市)六十件と続いたが、「一本松」とは大きな差があった。
 津波伝承館は岩手県が運営する。愛称は「いわてTSUNAMIメモリアル」で、高田松原津波復興祈念公園に立地する。
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