手術せずに性別変更を 浜松の鈴木さんが家裁申し立て準備

2020年12月31日 05時00分 (12月31日 05時02分更新)
性別変更の申し立てを準備する鈴木げんさん=浜松市天竜区春野町で

性別変更の申し立てを準備する鈴木げんさん=浜松市天竜区春野町で

  • 性別変更の申し立てを準備する鈴木げんさん=浜松市天竜区春野町で
 身体に負担をかける手術をせずに戸籍上の性別を変えたい−。出生時の戸籍上は女性だが、ホルモン治療をして男性として生きる浜松市天竜区春野町の鈴木げんさん(46)が来年夏にも、性別変更を静岡家裁浜松支部に申し立てる準備をしている。性別適合手術をしていない性同一性障害(GID)の人の性別変更は現在の法律では認められていないが、性的マイノリティーへの差別を禁じる憲章を掲げる五輪の開催などに期待して訴える。 (南拡大朗)
 鈴木さんは浜松トランスジェンダー研究会代表を務め、今年四月に浜松市が創設した性的少数者(LGBT)や事実婚カップルのための「パートナーシップ宣誓制度」で女性パートナーとの関係が公的に認められた。
 六年前からホルモン療法を続けて体毛が濃くなり、乳房の切除手術を受けた。子宮と卵巣は切除していないが、鈴木さんは「生理は来なくなり、自分の体は男になったと感じている。子宮と卵巣があってもなくてもどちらでもよく、手術を受ける必要を感じない」と話す。
 戸籍上の性別を変更するには、性同一性障害特例法の規定で、生殖能力をなくす手術を済ませる必要がある。最高裁は昨年一月、手術を受けていない岡山県の人の申し立てを認めず、特例法の要件を合憲とする判断を初めて示した。一方、この決定をした最高裁の裁判官四人のうち二人は「(特例法の要件は)違憲の疑いが生じている」との意見を表明していた。
 手術を望まない人の事情はさまざま。鈴木さんの支援者の一人で、LGBTの問題に詳しい水谷陽子弁護士(愛知県弁護士会)によると、手術を選ばない理由は健康面のリスクや費用、仕事の事情が多い。
 鈴木さん自身、費用の安い海外で手術を受けようとしたこともあるが、東京五輪の開催が決まったことで考えを変えた。五輪憲章には性的マイノリティーへの差別禁止が盛り込まれており、希望を感じたからだという。
 今年九月には、日本学術会議が特例法の廃止と新法制定を提言し、手術要件などは「国際的動向に即していない」と指摘した。水谷弁護士は社会に変化の兆しがみられるとして「国際社会も日本の社会もアップデートしており、常に問い続ける必要がある。新たな判断を勝ち取る可能性は十分ある」と鈴木さんの申し立ての意義を指摘する。
 鈴木さんは静岡家裁浜松支部で認められなければ、東京高裁や最高裁まで争うつもりだ。鈴木さんは「生きる上で大切なことを選択する権利は個人にある。自分が必要だと感じない手術を受けずに、正式に結婚をしたい」と話す。

◆選択肢ある方が望ましい

 GID学会理事長の中塚幹也・岡山大大学院教授(生殖医学)の話 トランスジェンダーで手術を望まない人がいれば、子宮と卵巣が体内にあること自体が耐えられないという人もいる。手術を希望しない人の数は把握が難しく少数派だと考えられるが、手術を望むと望まないにかかわらず、両方の人たちが幸せに暮らしていくことが必要。選択肢として、手術をしなくても性別を変えられるのが望ましい。

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