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【FC東京・カップ戦3度目の頂点へ:終】石川直宏 国立のスタンドから見たあかね色の夕景「あの光景は一生忘れられない…」

2020年12月31日 06時00分

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ナビスコ杯で優勝し、表彰台でサポーターの声援に応える梶山(右から2人目)らFC東京イレブン=2004年11月3日、国立競技場で

ナビスコ杯で優勝し、表彰台でサポーターの声援に応える梶山(右から2人目)らFC東京イレブン=2004年11月3日、国立競技場で

◇2004年11月3日 ナビスコ・カップ決勝(東京・国立競技場) FC東京0(4PK2)0浦和
 忘れられない景色だった。国立のスタンドから見上げた秋空に、暖かい色がじんわりと広がった。
 「もう一度、これを見てみたい」と、MF石川直宏(39)=現FC東京クラブコミュニケーター=は、あの日をこう思い出す。
 2004年11月3日。真っ青な空の下、国立の観客席は対戦相手の浦和の赤で埋め尽くされた。脈打つ心臓の音が聞こえた。ナオは「こんなかで勝ったら気持ちいいんだろうな」と思った。
 前半で退場者を出した。数的不利だったが、選手全員が走り続けた。死闘も後半20分を過ぎようとしていた。プレーが途切れた時に、ナオが戸田光洋に声を掛けた。
 「オレ、足がつってもう無理だからベンチに言っておいて」
 戸田も「分かった」と応答する。その後、ナオは両足を痛みに襲われながらプレーを続けた。交代の準備が整うのが見えた。安堵(あんど)した。
 「ようやくか。よく頑張ったな」と、自分に言い聞かせた。ボールがラインを割り、ベンチに向かって走り出そうとしたが、ボードには自分の「18」ではなく、戸田の「13」が表示された。
 「第4審判が間違ったのだと思った」
 だが、戸田は、迷わずタッチラインへと向かって駆けていく。そのまま馬場憂太が交代でピッチへと入ってきた。
 「どういうこと?」
 頭の上には、いくつも「?」が浮かんだ。そのままナオは、延長も含めた120分間を戦った。試合終了の笛に全身から力が抜け落ちた。
 延長戦を終えてPK戦へと突入したが、キッカーは他の選手に譲った。
 「両足がつっていたからとても蹴れる状態じゃなかった。助走して蹴る瞬間、足がピキッてなってコロコロなんて前代未聞だからね」
 PK戦を制し、歓喜の抱擁が繰り返される中、戸田が駆け寄ってきて隣で笑っていた。ナオは「戸田さん、どういうことですか?」と言ったが、「しょうがないじゃん。勝ったからOKでしょ」と繰り返した。ナオも戸田の笑顔につられて笑うしかなかった。
 そして、一歩ずつ国立のメインスタンドへと登壇する。メダルを受け取り振り返ると、あかね色に焼けた夕景が広がっていた。
 「あの光景は一生忘れられない。あそこに上ってあの空を見て、もう一度勝ちたいと思った。何度だって味わいたいよ」
(文中敬称略)

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