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「東京に行くことに…」中日・大野雄大の“冗談”で心臓が止まるかと【龍の背記者インタビュー】

2020年12月29日 11時39分

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契約更改し、色紙を手に笑顔を見せる大野雄=名古屋市東区の球団事務所で

契約更改し、色紙を手に笑顔を見せる大野雄=名古屋市東区の球団事務所で

◇龍の背記者・渋谷真のプラスワン
 長年、ドラゴンズを深く取材する中日スポーツ・渋谷真記者の人気コラム。今回は大野雄大投手の沢村賞を祝し、特別版としてインタビューをお届けします。

■自分の気持ちに従った

  ―まずはおめでとうございます! あの大野さんが沢村賞だなんて。感慨深いですわ
 「ホンマにねえ…。先発投手なら頭のどこかにはありますが、遠いものすぎて狙うものではない。シーズン前に宣言しないですよね? それくらい遠い賞。まさか…。という感覚ですよね。候補には挙がっていると周りから聞かされたので、選ばれるのならぜひという思いはありましたが」
 ―選考委員会でも菅野選手との一騎打ち。差を分けたのは
 「やはり完投数でしょうね。一人で投げきった数を評価していただけた。といっても、自分では絶対に完投なんて思ってないんです。自分の長所は長いイニングを投げられること。それは昔から思っていましたが、7、8回を毎試合目指していますが、最後までいける試合が多かった。われながらよく10試合もいけたなと」
 ―イニングイーターであることは広く知られていましたが、調べると投球数は最多が初完投の128球で、最少は107球でした。被打率2割3厘は特筆すべきものですが、実は2019年も2割6厘。打者一人あたりに要した投球数も、3・91球から3・95球と、わずかながら増えている。いかにして完投数を積み上げていったのでしょう?
 「僕、得点圏での被打率も悪い(2割7分4厘はセ・リーグの規定投球回数到達者の中でワースト)ですよね? ただ、四球を出さなかった。だから得点圏に背負う数、つまりピンチが少なかった。ヒット+四球みたいなのが少なかったからだと思います」
 ―確かに得点圏での打数(62)はリーグ最少です。では防御率、奪三振との2冠。完投数も含め、最も誇れるのは?
 「防御率ですね。野手が本当によく守ってくれた。失点が減って取れたタイトルだと思っています」
 ―そんな沢村賞左腕が、FA権を行使せず残留。ファンがどれほど喜んだことか…。改めて決断の理由を
 「ドラゴンズで優勝したい。権利取得に限らず、このチームで優勝したいと思っていたので。(今季)Aクラスになったことは、間違いなく来季につながる」
 ―あなたは残留表明の前に、ご丁寧に連絡してくれました。ありがとうございます。ただ、最初に言ったのが…
 「東京に行くことにしました。でしたね(笑)。シーズン中からチームメートにも『来年、どのユニホーム着てんの?』とかいじられるじゃないですか。で、僕も『東京来たら、連絡してや』とか返していましたからね。本気ならそんな冗談言えませんよ」
 ―心臓が止まるかと思いました(笑)。で、本当のところ、かなり悩んだ?
 「まずFA権を取れたことがすごくうれしかったんです。僕は1年目に登録1日。ボコボコに打たれたところからプロ野球が始まっていますから。しっかり悩もうと思っていたんですが、一試合一試合投げるたびに、このチームでもっと投げたいという感情が強くなっていったんですね。決めるのが早すぎという声もありましたが、自分の気持ちに正直に従った結果です」
 ―苦労して取得した権利。1年目だけでなく、2018年もある意味では象徴している。登板6試合で登録がわずかに7日。いわゆる「投げ抹消」。抑えたとしても翌日には2軍Uターン。僕たちサラリーマンの世界にも「上司は部下を選べても、部下は上司を選べない」という言葉がありますが、野球界も誰を使うかを決めるのは上司(首脳陣)。それなりの考えがあっての起用とは思いますが、ああ、部下(選手)を殺すのは簡単なんだなと見ていました
 「苦しかったですが、結果を残せなかったのも事実なので」
 ―そして2019年に与田監督と出会った。「170イニング投げてくれ」と。意気に感じるタイプの大野さんの心には響いたはず
 「就任されたときから『おまえには力がある』と。シーズン中にも『球界ナンバーワン』と言葉をかけていただいて。自分では『そんなことありません』と言ったし、その域には達していませんが、そうなっていくことが与田監督への恩返しかなと。残留の報告をしたときにも『なんていい日なんだ!』と喜んでくださったので」
 ―上司が部下を生かした好例ですね。とはいえ、FA権を手にした多くの選手は「他球団の評価を聞きたい」という思いを断ち切れないのに…
 「(2019年オフに)複数年ではなく単年契約を選んだころは、そのつもりでしたよ。大事な権利。選手なら自分の評価は気になりますもん。その一方で、聞くだけ聞いといて…というのもどうなん?と。投げるたびにドラゴンズに残りたい気持ちは強まり、他球団の話を聞きたい思いは弱まり、無くなったんです」
 ―おとこ気だけでは残留できない。3年契約と聞いていますが、内容にも満足している?
 「総額は出来高とかいろいろあるので正確には言えませんが、ただ言えるのは最初に金額を見たとき、思っていた以上だったということです。予想を上回っていた。だから何の不満もなく…という感じです」
 ―大きな契約には大きな責任も伴う
 「チームの日本人選手では最高年俸をいただくので、すごくプレッシャーはありますが、これまでも投手を引っ張るという気持ちで戦ってきました。今年も変わらずというか、さらに引き締めていきます」
 ―恩返しという言葉も使っていた
 「僕は大学最後のリーグ戦で(左肩痛のために)1球も投げられなかった男ですから。そんな投手を大事なドラフト1位を使って指名していただいた。その恩をまだ返せていないということです。恩返しとはチームを勝利に導く、優勝に導くということ。絶対にそこを目指したい」
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