有村昆さん、鬼滅の刃はスター・ウォーズだ!! 「炭治郎はスカイウォーカー、禰豆子はレイア姫」 3つの勝因挙げる①コロナ禍の影響②群像劇の巧みさ③成長物語を描く
2020年12月29日 05時00分
映画コメンテーターの有村昆さん(44)が本紙の取材に応じ、映画「鬼滅の刃」の大ヒットについて3つの“勝因”を挙げて解説した。名作SF映画「スター・ウォーズ」との類似点も挙げながら作品の楽しみ方や映画界の課題も指摘した。
早い段階で「『千と千尋の神隠し』を超えてくる」と予想していた有村さんだが、当初はここまでの大ヒットは想像できなかったという。
「平成は完全に終わったと思いましたね。昭和は手塚治虫、平成は宮崎駿、令和は新海誠かなと思っていたけれど、意外な刺客が出てきた」
「平成は完全に終わったと思いましたね。昭和は手塚治虫、平成は宮崎駿、令和は新海誠かなと思っていたけれど、意外な刺客が出てきた」
勝因としてまず挙げたのがコロナ禍の影響だ。
「有力な洋画の公開延期でライバルがいなかった。シネコンも時刻表のように朝から40回も上映したりした」
「有力な洋画の公開延期でライバルがいなかった。シネコンも時刻表のように朝から40回も上映したりした」
原作漫画における群像劇の巧みな描き方も勝因に挙げた。
「AKB方式や宝塚方式のように登場人物がものすごく多く、ヒエラルキー(階層)をしっかり作る計算がある。鬼殺隊【1】は『柱【2】』を中心に上下関係があり、先輩後輩、友達、ライバル、恋人のように人間関係が描きやすい。鬼も『十二鬼月【3】』がいて入れ替え戦もある。『スター・ウォーズ』と非常に方式が近く、グッズ展開や推しメンを作りやすい。勧善懲悪ものは子供向けになりやすいが、今回は鬼も元は人間で悲しい話があり大人も感情移入させやすい」
「AKB方式や宝塚方式のように登場人物がものすごく多く、ヒエラルキー(階層)をしっかり作る計算がある。鬼殺隊【1】は『柱【2】』を中心に上下関係があり、先輩後輩、友達、ライバル、恋人のように人間関係が描きやすい。鬼も『十二鬼月【3】』がいて入れ替え戦もある。『スター・ウォーズ』と非常に方式が近く、グッズ展開や推しメンを作りやすい。勧善懲悪ものは子供向けになりやすいが、今回は鬼も元は人間で悲しい話があり大人も感情移入させやすい」
映画が確実にヒットする法則をふまえた戦略にも注目した。
「最も重要なのは成長物語。(主人公の)炭治郎の成長物語をしっかり描いているが、劇場版の『無限列車編』は『アベンジャーズ』と同じ“破滅”というやり方もしている。煉獄杏寿郎【4】さんという先輩師匠が死ぬことで爆発力が増す。前半は映画『インセプション』や『マトリックス』みたいな仮想現実の中に入っていく作りで、アニメを見ていない人も取り込めるようにしている。後半はアニメを見ていないと熱さが分からない常連向けという感じがした」
「最も重要なのは成長物語。(主人公の)炭治郎の成長物語をしっかり描いているが、劇場版の『無限列車編』は『アベンジャーズ』と同じ“破滅”というやり方もしている。煉獄杏寿郎【4】さんという先輩師匠が死ぬことで爆発力が増す。前半は映画『インセプション』や『マトリックス』みたいな仮想現実の中に入っていく作りで、アニメを見ていない人も取り込めるようにしている。後半はアニメを見ていないと熱さが分からない常連向けという感じがした」
他のアニメ映画と違い著名な俳優がゲスト声優として出演していない点も評価。
「ちゃんとしたアニメファンに向けて作っている。ジブリ作品の時からずっと俳優の起用はいかがなものかと言われている」
「ちゃんとしたアニメファンに向けて作っている。ジブリ作品の時からずっと俳優の起用はいかがなものかと言われている」
残酷な描写を懸念する声もあるが、有村さんはむしろ日本の映画やドラマの問題点を指摘した。
「鬼は血肉を食らうわけで、やっつけるには首が飛ぶ。いま、世の中のコンプライアンスが厳しすぎてコンテンツがつまらなくなっている。ネットフリックスや韓国映画が面白いのは好きなものを撮れるから。人間にとって過激な描写という毒は重要だと思う」
「鬼は血肉を食らうわけで、やっつけるには首が飛ぶ。いま、世の中のコンプライアンスが厳しすぎてコンテンツがつまらなくなっている。ネットフリックスや韓国映画が面白いのは好きなものを撮れるから。人間にとって過激な描写という毒は重要だと思う」
有村さんは「鬼滅の刃はスター・ウォーズ」という楽しみ方も提案してくれた。
「炭治郎【5】はルーク・スカイウォーカーで、禰豆子【6】はレイア姫、鱗滝【7】はヨーダで、伊之助【8】や善逸【9】はハン・ソロとチューバッカ、水の呼吸はフォース、煉獄はオビ=ワン、鬼滅の刃はライトセーバー。師匠が殺されて復讐(ふくしゅう)に燃え、最後は禰豆子を取り戻す。吾峠先生はきっとスター・ウォーズが好きなんじゃないかな」
「炭治郎【5】はルーク・スカイウォーカーで、禰豆子【6】はレイア姫、鱗滝【7】はヨーダで、伊之助【8】や善逸【9】はハン・ソロとチューバッカ、水の呼吸はフォース、煉獄はオビ=ワン、鬼滅の刃はライトセーバー。師匠が殺されて復讐(ふくしゅう)に燃え、最後は禰豆子を取り戻す。吾峠先生はきっとスター・ウォーズが好きなんじゃないかな」
【用語解説】
【1】鬼殺隊 鬼から人間を守る剣士の組織
【2】柱 鬼殺隊で最高位の剣士。水、蟲(むし)、炎など9柱がいる
【3】十二鬼月 “鬼のボス”鬼舞辻無惨(きぶつじ・むざん)直属で最強とされる12体の鬼
【4】煉獄杏寿郎(れんごく・きょうじゅろう) 炎柱。無限列車に乗り込み鬼と戦う
【5】竈門炭治郎(かまど・たんじろう) 主人公の剣士。鬼に家族を殺され、生き残ったものの鬼に変貌した妹の禰豆子を人間に戻すため戦う
【6】竈門禰豆子(かまど・ねずこ) 炭治郎の妹。鬼としての飢餓を抑え込み人肉を口にしないよう竹筒をくわえる
【7】鱗滝左近次(うろこだき・さこんじ) 炭治郎の師。炭治郎を鬼狩りの剣士に育てる
【8】嘴平伊之助(はしびら・いのすけ) 炭治郎の同期剣士。イノシシの頭をかぶっている
【9】我妻善逸(あがつま・ぜんいつ) 炭治郎の同期剣士。普段は臆病で小心者だが、戦いの中で眠りに落ちると本領を発揮する
【1】鬼殺隊 鬼から人間を守る剣士の組織
【2】柱 鬼殺隊で最高位の剣士。水、蟲(むし)、炎など9柱がいる
【3】十二鬼月 “鬼のボス”鬼舞辻無惨(きぶつじ・むざん)直属で最強とされる12体の鬼
【4】煉獄杏寿郎(れんごく・きょうじゅろう) 炎柱。無限列車に乗り込み鬼と戦う
【5】竈門炭治郎(かまど・たんじろう) 主人公の剣士。鬼に家族を殺され、生き残ったものの鬼に変貌した妹の禰豆子を人間に戻すため戦う
【6】竈門禰豆子(かまど・ねずこ) 炭治郎の妹。鬼としての飢餓を抑え込み人肉を口にしないよう竹筒をくわえる
【7】鱗滝左近次(うろこだき・さこんじ) 炭治郎の師。炭治郎を鬼狩りの剣士に育てる
【8】嘴平伊之助(はしびら・いのすけ) 炭治郎の同期剣士。イノシシの頭をかぶっている
【9】我妻善逸(あがつま・ぜんいつ) 炭治郎の同期剣士。普段は臆病で小心者だが、戦いの中で眠りに落ちると本領を発揮する
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