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<移住特集> 熊谷真実さんにインタビュー(全文)

2021年1月1日 03時10分 (1月1日 03時11分更新)

熊谷真実さんのインタビューは2020年12月9日、浜松市のホテルで行いました。全文を掲載します。(聞き手・報道部記者/中田弦)

浜松市に移住した女優の熊谷真実さんは、まだ見たことがない浜松まつりの大凧にびっくり。「浜松は人柄も気候もあったかく、いつもひなたぼっこしているよう」と話す=浜松市南区の浜松まつり会館で(川戸賢一撮影)

 <Q> コロナ禍での移住となりました。
 <A> 政府の緊急事態宣言が発令される前日まで舞台の稽古をしていました。その稽古がある日突然なくなってしまった。私は直感で動くタイプなので、夫に浜松に引っ越したいと話しました。そしたら、夫の方は、私みたいに、ある日突然春休みになってしまった。(私は)大きな舞台を控えていたので、緊張の糸が切れてしまった。自分の所在をどこに置くのか、分からなくなってしまった。浜松に引っ越そうよって言ったら、夫の方は実感がなくて、え何言ってんの?という感じでした。緊急事態宣言が明けた6月に、あたしは移住したい、夫はまだだろうと、夫婦げんかみたいになった。その仲裁に、ダンサーの夫の妹が「私たちも帰るから、お兄ちゃんも一緒に帰ろうよ」と言ってくれて、夫も重い腰を上げてくれた。
 <Q> 直感というのはどういったものだったのですか。
 <A> 移住っていうところまでは考えてなかったです。大げさな言い方ですが、疎開みたいな気持ち。最初はそういう感覚でした。これって世界的な出来事だな、と思った。私たちに世界的なものが起きている。直感的な危機感というか。最初は、疎開感覚でした。
 <Q> 浜松と言い出したのは熊谷さんの方からですか。
 <A> はい。夫のふるさとなので。元々、田舎暮らしがしたいと思っていました。夫は働き盛りだが、私はもう60歳だし自然豊かな所で過ごしたいとずっと思っていた。それで、結婚した以上、いつかは浜松に帰るだろう、と考えていたのです。「いつか帰るだろう」って思っていたのが、私の中でコロナで早まった、というか。夫は長男なので、実家に帰ることへの重責もあったと思います。やみくもに帰りたくないと思っていたわけじゃないと思う。なかなか「うん」とは言わなかったが、妹の説得もあり帰ることが決まったら、とんとん拍子で決まっていきました。家もあっという間に決まり、スープの冷めない距離という感じで。元々フェイスブックやインスタグラムをやっていた流れで、「浜松市役所来ました! 住民票を出しました!」と出したら、こんなに大きなことになるとは。私がびっくりしています。
 <Q> コロナ移住と言われていますが。
 <A> コロナ移住のはしりのような存在に、いつのまにかなっていて、驚いているのは私です。考えようによっては、私たちは夫の実家にUターンしたということだが、コロナ移住というキーワードにぴったりはまってしまったのかな。
 <Q> 仕事は東京との往来ですか。
 <A> はい、そうですね。いつまで続くか分からないし、冬はどうするんだろうと思っていました。12月、1月に東京にいることが。だって(感染者が)増えているでしょう? 東京も。とにかく冬は浜松で過ごしたいと思っていました。お呼びがあれば、東京にも番組収録などで行くこともあります。しかし、自分は舞台女優だと思っていて。なんというか…。私、3・11(東日本大震災)の時に舞台をやっていて、役者としてのむなしさというか。自然災害、日本の緊急事態に、演劇の力がどこまで役に立つのかと考えさせられた。すごくつらかった。今回の事態では、舞台はしばらくできない、と。
 <Q> 今は舞台はやらず、番組収録で東京に行っていますね。
 <A> はい。今は、70歳以上はテレビ局に入れない。なので、徹子の部屋に出た時も、私はサイクルが早い。70歳以上の方が出られないということで私に回ってきました。テレビ局に入る人数、この前はテレビ静岡からお声がかかった時も、東京から帰ってきて2週間たってなかったから出られなかった。規制が厳しくなっている。そんな中で、コロナ移住の代表者になるなんて思っていなかったです。こっちに来たのは切羽詰まってのこと。東京は家賃が高かったし、この先、二人だけの生活よりも家族、(義理の)お父さん、お母さん、妹たちがいる、家族が多い方がなにかと助け合えるという気持ちがすごくありました。東京にも友人がいて、親戚もいますが、私の中では、避難したいという気持ちが大きかった。家計的にも、ですね。
 <Q> 浜松は「心の居場所」と言っています。
 <A> 移住してきて、思うのは、自然が身近にあるのは、こんなにも体が楽になるのか、と。毎日、窓を開けた瞬間から、はぁ~ってなるし。そういうことを経験したことがなかった。東京の高円寺の商店街育ちで、めっちゃ新宿に近かった。母が変わった人で、ちょっと熱で学校を休んだ時は、「休んだのだから、高尾山に行こう!」って。相模湖とか、奥多摩とか近いので。
 <Q> 住まいを移す、移住というのは、人生の価値観を変えますか。
 <A> 変わるんじゃない? …なんて言うのか、私の場合は夫の実家に戻ってきたというのが大きい。みなさん、嫁いできたり、あると思う。たまたま私は、コロナがきっかけだった。行った先が、来た先が、本当に私に合っていました。風土も人柄も、食べ物も全て私に合っていた。とっても暖かい。東京よりも1枚(着るものが)要らない。食べ物、野菜果物全部おいしい。ウナギ、ギョーザ、カフェも充実している。人柄ですよね、一番大事なのは。温かい。例えば、東京では「あ、芸能人だ」と思われても声を掛けられることはあまりないんですが、浜松の方は「あー真実ちゃん!」って言ってくれる。めっちゃうれしい。全然、うれしい。私のほうから写真撮らなくていいの?って言っちゃう。私の性格もそうなのかも。だから合っている。浜松の人は表現がダイレクト。私も会ったら気軽に声掛けてね、と言っている。そういう意味では「真実ちゃん!」って言ってくれるのは私の性格に合っている。もう、ご近所の人もクリーニングのお姉さんもみんな「真実ちゃん、真実ちゃん」って言ってくれます。
 <Q> 私も取材を通してそう感じています。
 <A> 浜松の方の温かさは、ほわっとしたぬくもりなんですよね。日だまり、というか。浜松の人はひなたぼっこ的な温かさがあるんです。政令都市だから、人口も多いし、都会と自然がうまく折り合いがついている。治安がいい。いろいろな国の方がなじんでいる。受け入れ方が温かいんでしょうね。
 <Q> 浜松は交通事故が多いとされています。一方で、横断歩道に歩行者がいると立ち止まる車が多いといわれています。
 <A> それは分かります。東京で20年以上運転していますが、道も狭いし、慎重な運転になる。でも、浜松は運転が荒くなってしまった。運転しやすいんです。だから、ついね。しっかりと気をつけないといけませんね。義父がびゅーん!って運転して、驚いたが、私もそうなってきている。本当にね、人柄がいいんですよ。宣伝が下手っていうか、みなさま勤勉。自分たちの街を観光している暇がない。
 <Q> 行政も(やらまいか大使として)熊谷さんに期待しています。
 <A> 私は自由業なので、行きたいところに行けます。ユーチューブでお金をもらっているわけではないが、こっちに来たら、浜松でできることをしようと思っていました。これからは、個の時代になると思う。ユーチューブってすごい。新聞の部数も大変だと思う。個の時代になっていく。テレビ、舞台ができない状況で、ここからできることはないかなと思っています。浜松巡りをやってみよう、浜松の景色のいいところで朗読をやってみようと思いました。二本立てでやっている。カフェとかイベント巡りとか。フラワーパークとか、行きたいと思ったところに行っています。朗読は、浜松の景色のいいところで、金子みすゞさんを朗読した。「耳と景色で聴く朗読」です。三ケ日の旅館「琴水」とか浜名湖畔で朗読しました。
 <Q> 11月19日には妹の松田美由紀さんらご家族が浜松に来たと投稿されてますね。
 <A> 食べ物は、ウナギ、ギョーザ。食べ物がおいしくて景色もいい。それで満点じゃないですか。それを思う存分堪能してほしかった。みーちゃん(松田さん)も「最高。あったかくていいねぇ」と感想を言ってくれました。
 <Q> 会員制交流サイト(SNS)で浜松を発信する思いは。
 <A> 女優の仕事は誰かの役を成りきることです。もう一つは、熊谷真実というタレントとして、何かを宣伝したり表現したりするのも仕事だと思っています。それはお金をもらわなくても。働くのは人のために動くと書くんです。私は人のために動きたい。お金をもらっても、もらわなくても生涯働きたいと思っている。
 <Q> 浜松まつりに興味はありますか。
 <A> 夫と結婚して8年になるが、毎年同じ時期に舞台をやっていて、まだ一度も見に行けていない。絶対に参加したい。東京の高円寺(杉並区)出身ですが、徳島の阿波踊りが有名なんです。子どものころから阿波踊りを踊っていて、お祭り大好きなので、浜松まつりにもすんなり溶け込んで、参加したい。熊谷真実だと分からないくらい溶け込みたい。※子どもを大切にする風習は素晴らしいですよね。赤ちゃんの誕生を祝うのはやはり、浜松の人の温かさだと思います。(この部分は音声データにはありません)
 <Q> 他にも気になるイベントはありますか。
 <A> カフェと公園が隣接した施設で、スムージーの販売イベントをして、550杯も出た。私の思いつきのイベントでしたが、屋外でソーシャルディスタンス(社会的距離)も保って安全に対策しました。みんなが元気が出るようなイベントをしていきたいです。子どもも楽しめる青空ディスコ大会とかやりたいなぁと思っています。
 <Q> SNSでの発信には反応がありますか。
 <A> コロナ前は2500人だったインスタのフォロワーが2万6000人と10倍になった。ほとんど浜松の人だと思いますが、「みんな会いたい」って言ってくれます。

 熊谷真実(くまがい・まみ) 女優。1979年のNHK朝の連続ドラマ小説「マー姉ちゃん」で主役を務める。2020年に浜松市に移住し、同年12月に市の「やらまいか大使」となる。東京都杉並区出身。


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