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<ユースク> 「転売ヤー」美術展に殺到 限定グッズ、中国の通販で高値出品

2020年12月26日 16時00分 (12月26日 16時00分更新)
中国のネット通販で購入し、広東省から送られてきた古代エジプト展限定「すみっコぐらし」のぬいぐるみ=北京の中日新聞中国総局で(坪井千隼撮影)

中国のネット通販で購入し、広東省から送られてきた古代エジプト展限定「すみっコぐらし」のぬいぐるみ=北京の中日新聞中国総局で(坪井千隼撮影)

 愛知県美術館で六日まで開かれていた「古代エジプト展」(中日新聞社など主催)で、限定グッズの転売目的とみられる来場者が殺到したという情報がユースク取材班に届いた。声を寄せた名古屋市西区の女性会社員(53)は「古代史を感じる思いや畏敬の念はないのでしょう。人気グッズの仕入れだと悲しくなりました」と嘆いた。調べてみると、グッズは日本や中国の通販サイトに高値で出品されていた。 (奥田哲平、北京・坪井千隼)
 女性会社員は開幕初日の光景を「異様」だったと振り返る。開場と同時に中国人グループや日本人の若者らが展示品に目もくれず、グッズ売り場へ。お目当ては、人気キャラクター「すみっコぐらし」とコラボしたぬいぐるみなどの限定商品。購入前の商品を床に並べて写真を撮影、ネットにアップし、その場で注文を受け付ける人もいた。
 中日新聞社文化事業部の担当者によると、こうした事態は想定し、一定の対策もしていた。ホームページ(HP)などで「転売は固くお断りします」と明示。購入は一回限りで、グッズ一種類につき三個までに制限した。購入すると入場券裏にスタンプを押し、何度もレジに並べないよう工夫した。
 だが、実際は購入後、会場外で仲間に商品を渡し、新たなチケットで再入場するケースが続出。早々に品切れになる商品もあった。担当者は「正規チケットで入場している以上、同じ人物が複数回買ってもやめさせられない」とこぼした。
 希少品の転売で稼ぐ人たちは、ネット用語で「転売ヤー」と呼ばれ、日本人だけでなく、組織化された中国人が目立つ。
 本紙中国総局は、ネット通販大手「淘宝(タオバオ)」で古代エジプト展限定グッズのぬいぐるみ(定価九百九十円)が百五十五元(約二千五百円)で出品されているのを確認、取材のために購入した。広東省から発送した出品者に尋ねると「商品は全部本物。名古屋に人を送って行列に並んで入手した」と回答があった。実際は日本在住の留学生らを雇っている可能性が高いとみられる。
 購入代行を“バイト”にしているという奈良市在住の中国人留学生の男性(26)によると、時給は百五十元(交通費と購入費用は別)。エジプト展ではないが、九月下旬に日本モンキーパーク(愛知県犬山市)であったイベントに並び、すみっコぐらし限定グッズ二個を購入代行した。グッズが欲しい中国人から直接請け負ったという。
 入場と会計に四時間近くかかり、バイト代として五百五十元を稼いだ。男性は「日本のアニメやサブカルチャーを好きな中国人は多い。コロナのせいで来日できないファンの要望に応えている」と正当化した。

不正転売、進む法規制 フリマサイト普及、手軽なビジネスに

 個人が商品を売買できるフリーマーケットサイトがインターネットに普及した影響で、転売ビジネスは手軽になった。十一月に発売されたゲーム機「プレイステーション5」は、フリマサイトで販売価格(通常版四万九千九百八十円=税別)の倍近い値段で出品された。
 市場経済の下では商品の転売は原則自由だが、品薄な商品が一部で買い占められて転売されれば、本来適正価格で買えるはずの消費者の手に届かない。転売問題を巡っては、コンサートなどのイベントチケットの高値転売を禁じたチケット不正転売禁止法が昨年六月に施行。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は今年八月までマスク転売を規制した。
 「すみっコぐらし」を制作するサンエックス(東京)は十月、HPで悪質な転売行為に反対する方針を表明。転売問題に詳しい福井健策弁護士は「転売禁止の条件が示されているのに、その目的でないように振る舞って商品を購入すれば、いわば販売側をだまして入手したとも言え、詐欺罪や業務妨害罪に当たる場合がある」と指摘。悪質な転売品は購入しないなどの消費者意識の向上やフリマサイト側の抑止策を求めている。

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