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はたして2020年のJRAは「牝馬が頂点を席巻」したのか?獣医師記者が統計学を駆使して出した“真実”

2020年12月25日 06時00分

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2020年のG1を引っ張った牝馬グランアレグリア

2020年のG1を引っ張った牝馬グランアレグリア

◇獣医師記者・若原隆宏の「競馬は科学だ」
 2020年の中央競馬を振り返ると「牝馬が頂点を席巻した」と言われる。今年、牡牝混合で施行されたJRAG1はここまで高松宮記念、大阪杯、天皇賞・春、NHKマイルC、安田記念、宝塚記念、スプリンターズS、天皇賞・秋、マイルCS、ジャパンCの10競走。うち8競走の勝ち馬が牝馬だった。
 この結果に対して「なぜ牝馬が強かったのか」という問いが生じるのは自然ではある。ただし、これを科学的に考えるには、その前段階として「牝馬が強かった」と一般化してもよい偏りだったのか、統計学的に検討しなければならない。
 当欄でも何度か紹介しているが、統計学は、検討しようとしている内容を打ち消した仮定(帰無仮説)前提に、実際に起こった事象が「たまたま起こる確率」を求める。この確率が非常に小さければ「たまたまだとするより、何かしら理由があったと考える方が妥当だ」と、背理法に似たロジックで「事象の背景に理あり」ということを示す。
 実際に計算してみた。帰無仮説は「牡牝に力差がない=勝ち馬の性別がどちらかという確率は、出走頭数の比に従う」だ。8競走以上の勝ち馬が牝馬となる確率は0・0155%。通常、統計学では「求めた確率が十分小さいと言える水準(有意水準)」を事前に決めておくが、5%とか1%に設定することが多い。慎重な検討では0・1%とすることもあるが、いずれにしても計算の結果は十分小さい値だ。
 ただ一方で、8勝のうち3勝はグランアレグリア、2勝はアーモンドアイだった。この5競走を別にしてみると、様相はがらりと変わる。同じ帰無仮説から、残り5競走中、3競走以上を牝馬が勝つ確率を求めると45・45%もある。2分の1に迫る確率を「十分小さい」と評価するのはナンセンスだ。
 確かに今年は牝馬が牡馬を撃破するシーンが目立ったが、それはグランアレグリアとアーモンドアイの2頭が突き抜けて強かったのであって、一般に牝馬が強かったというわけではない。統計学は冷静に、そうした事実を示してくれる。

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